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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1036] 水のない水槽
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


まるで そう
僕は干上がった河で
苦しそうにもがきながら
今にも死にそうな目をして尾鰭をバタバタさせる魚のように
とても絶望的な現実を生きている

夜明けの空が霧に覆われて
白くなって見えなくなって
いっそのこと悲しみも見えなくなればいいと呟いた

君の瞳には、今
僕がひどく歪んで映っていて
僕の中に眠る憎しみにひどく怯えている
こうやってやさしく包み込んでいても
憎しみは君の瞳からはむき出しに見えてしまって
君の表情からはいつも
僕に対する恐怖感が垣間見れるほどで

時間の歯車はいつから
こんなにも狂い始めたのか
世界はこんなにも美しいというのに
何処に行こうと
不安は僕についてくる
暗い早朝のホームにも
放課後の廊下にも
水平線に沈む夕陽を君と眺めてても
いつの間にか不安は胸にあって
見えない何かに怯えるように
暗い闇の中
必死に光を探した


まるで 僕は
ピエロみたいに
無意味なほどに作り笑いを浮かべてみたり
気づいてみれば
君はもう居なくて
下手な悪魔の真似をして
周りの励ましさえ遮った
夕焼けが涙で滲んで
僕は独り
悲しみの中
不器用に泳ぎながら
ずっと ずっと
君を捜してた
水のない水槽の中
無表情に歩きながら
ずっと ずっと
君を捜してた
僕だけを残して
陽は今日も昇る
ずっと ずっと
空に捜してた
幾億もの星の中に
砂浜の貝殻の中に
夜にみる夢の中に
捜してた
捜してた……。

2007/05/03 (Thu)

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