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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1089] 現在も過去も透明だった
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


暑い陽射しが降り注いで
汗を拭いながら
交差点をわたる
倒れてしまいそうなこんな夏日に
何もかもが透明だったあの日よりも
少しだけ色味を持った僕は日陰に逃げる
人混みをすり抜けるようにして
蛇行しながら
遠慮しながら
同じ様なビルの並び
過ぎていく景色は灰色と抜けるような真夏の青空

何もかもが透明でいられた頃
何もかもから逃げてこられた
やり過ごせた日から僕はだいぶ歳を重ねて
親の管理下から脱却して
今はこんな都会の街で汗してる

ああ
ビデオのコマ送りのように流れ去る人の群
懐かしい景色は一瞬にしてこんな街に姿を変えて
楽しそうな笑顔は過ぎ行く時間にさらわれて
僕をこんな神経質で無愛想な奴に変えて
今はもう
アルバムの中でしか思い出すことのできない 数ある想い出
暖かな春の風も気づいてみれば
こんな生暖かい温風で
この頃は時間の流れがまるで止まってしまったかのように遅く感じる
それは
きっと嫌々仕事してるから
やりたくもないことをやらされているから
全ては僕の判断にゆだねられた結果なのにな…

僕は結局
現在も過去も透明で
いつだって
誰からも必要な存在だとは視られてなくて
気づいてみたら
消えそうになってて
半透明なからだで僕は泣きじゃくるんだ
あの頃のように
澄んだ透明に戻りたくて
無理だと知りながらも
知っているからこそ
僕は泣きじゃくるんだ
子供のように
子供でいられた
子供だった
僕は泣きじゃくるんだ
もう戻れない過去を羨ましがるように
無理なことは知ってすぎるほど知っているから
だからこそ
僕は泣きじゃくるんだ
今にも消えてしまいそうな
汚れきった半透明のからだで。

2007/05/09 (Wed)

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