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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[1096] 散りゆく声
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


泣いてしまうよ
いつもいつだって
悲しいことがあれば
すぐに泣いてしまうよ
今確かに希望は胸にあって
けれどまた不安は僕を絶望させる
窓の外には相変わらずに青空がのぞき
いつかの僕が見たときの青色よりも
少し淡い色をして
今瞳に映る
流れる雲が白くゆっくりと時間を進ませ
ほら気づいてみれば
空は夕焼け茜色
五時のチャイムがなんだかしんみりさせるよ
心の奥の脈打つものをかすかふるわせる

僕の声は散っていく
君に伝えた好きですの言葉も
当たり前に散っていった
後には何も残さずに
ただ切なさだけを風に変えて
時間は無神経に流れる
止まることなく
止まってくれることもなく
君の後ろ姿が涙でぼやけてにじんで

あぁ
初めての恋は
実らないのかな
散りゆく声は溜息となって
また空気に混ざって消えていく
気持ちはこんなにも溢れているというのに
伝わらずに
僕の初恋はあっけなく静かに散っていく
風にあおられて枝から落ちる葉のように
儚く切なく
初めての恋は音さえなく散っていった
ただ泣いて泣いて泣いて
瞼を腫らして

万華鏡からのぞいた世界
景色は変わりゆく
好きな人も
身のまわりの生活さえも
気持ちさえ変えてゆくよ
美しくも 儚くて
甘酸っぱい初恋の味
僕を吸い込んで
ゆっくりと吐き出す
少しだけ大人びた今
少しだけ思い出してみる
少しだけ瞳が潤んでた
あの日の僕の声
あの日の君の声
胸の奥で 耳の奥で
まだ残ってる
実らぬ恋のほろ苦さだけが残ってる
それでも懐かしく懐かしく思い出せる
それはきっと僕にとって意味のある思い出だったから
きっと今でも懐かしく思い出せる
あの日と変わらない想いと気持ちで
大人になってもこうして思い出せる。

2007/05/11 (Fri)

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