詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
目をつぶって笑った
目をつぶって笑ったら、暗闇で景色が塗りつぶされた
見えたものは孤独以外の何物でもない
歯をむき出しにして笑った
歯をむき出しにして笑ったら、ばかだとみんなに呆れられた
聞こえるものはほぼ無音といってもいいぐらいの静かな孤独
僕が笑ったとたん
みんなの顔から笑顔が消えた
さっきのざわめきがまるで嘘のように
みんなの口から話し声が途絶えた
そして、誰もいなくなる
僕以外のすべての人が魔法が解けたみたいにポカンとした顔で家に帰る
残された僕はそこにいた誰よりも悲しく
そして孤独だった
夕方の公園、ブランコを漕ぎながら
待っている人はきっと本当の僕のお母さんじゃない
頼っていいわけもなく
頼れる理由さえここにはなかった
だから、誰もいなくなる
ここにも
そこにも
あそこにも
そして、誰もいなくなる
残されたこの孤独と一緒に悲しくなる。悲しく鳴る五時のチャイムを心で聴くだけ
心で聴くだけ
粘り気のあるチャイムがやけに心に張りついて
私はただあなたのくれる本当じゃない母としてのやさしさを時々伺うように見つめるだけ
聞き入るように、聞き流すように
窓もドアもない息苦しい部屋に父とあなた
そして私がいるだけ。
[前頁] [甘味亭 真朱麻呂の部屋] [次頁]
- 詩人の部屋 -