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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[2248] 狂歌〜愛ゆえに私はくるう
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]

あるべき場所に人は終わりに目を閉じたら元に戻るように
さよならも何も言わずに去っていく深い水底に沈むように
その身体を時の渦の中に身をまかせるように生きている 生きていく
生まれては死に生まれては死にを繰り返す淀みのない永遠の中で連鎖する摂理
変わりのない夕暮れの 景色をまた今日も昨日の様に見ていた なんの違和感もなんの感想もなくたまに浮かんできても いつも味気ない感想でありきたりな答だけ
人波を必死にかき分けながら気だるい温度差に火照った身体が昨日と同じ様に答を求めてさまよわせる やっとつかんだものも同じような答ばかり
退屈を紛らすために出す犠牲なんてこの世には必要ないらしい だって困って泣き出すのはいつだって退屈している僕以外にはいないし考えられないから
人波を避けながらかき分けながらいつもたどり着くのは暗い孤独な闇の中 打ち明けられる人もなく気付いたら何故か光の届かぬ夕闇の中 月明かりだけが僕を照らしてくれる 大好きな夜の窓辺に佇み空を見上げる 泳いでく月を眺めある時には月から逃れようとしてまたある時には月にやさしさを求めきらめく光を抱きしめたかたちあるものだったらしめころしてしまうくらい強く強く僕は抱きしめた 月をまた今夜も抱きしめたまま 人は昨日と変わらぬ孤独を背負い 見果てぬ夢をまた追いかけたきり 僕はその後ろ姿をその日から見てない 見失ったわけじゃない またここに帰るよと告げていたから その言葉を信じ待ち続けていたらだいぶ歳をとって 日々を重ね少し老いただけのことさ その時間を返せとは言わないよ
そのかわり歌うんだよ 今夜も 終わらない永遠のうた くるったようにされど
いつかの夜の様に帰らぬ君に歌う 今日は今日で今日の今日しか歌えない歌を明日は明日で明日の明日しか歌えない歌を 限りある定められた時の途中(なか)で君のためだけに君だけを想って歌う歌を。

2008/02/28 (Thu)

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