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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[3209] いつか咲いた花
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][得票][編集]

いつかここに咲いていた花の名前を忘れないで
たとえ今は幻の中へ消えてしまってても
それはいつかの昔は通用しなかった真実だから
枯れた今でこそ言える真実なんだよ

いつかそこに咲いた花の名前はなんだい?
ほら言ってみればみんな忘れてる

僕という花を忘れなでいて
過去に葬らないで
確かにここに咲いていた花だから
種を落とした花だから
僕が存在していた証をもつ種がその真実を証明してくれる

ほら僕がいた証に種をいくつも落とすから
僕がいた証はその種の数だけ消えずずっと伝承されてゆく

それがいつか咲いた花の底力
誰しもみんな残したい種

いつかの夕べ 眺めた夕陽
風に揺れてた君の長い髪
幻になる日などないと思ってた
けれどやがて今が昨日になってはるか過去になって気がつきゃ歴史の中だけの時代になる
太古の人たちもそんなふうに生きたのかな
過ぎゆく日々を数えながら何か言葉にならない気持ちを詩の代わりに壁に刻んだのか
その思いは僕らの残す種と同じで永遠に消えない証
たとえ種がすべて死んでしまっても
花も種も その花の種も
みんな消えない場所で光り輝く 永遠に

花の咲く場所にそれはかならずあるから
みつけてごらん
若い元気な笑顔で咲いていられるうちに
いつかの花になるまえにステキな花を咲かすんだ

それが君の人間としての第二の仕事だ
もしかしたら第一の仕事より大切な大切な仕事だ

みんな忘れかけてる

その花がそこに咲いてた事
紛れもない事実としていつかは見てた事
人は時にそんな事実をまるでないもののように過去へと捨て去る
過去はいいように使うためのゴミ箱じゃないよ

おぼえておくがいい
君もいつか忘れ去られるいつか咲いてたらしい花になる事
今に見ているがいい
その言葉がそっくり返ってくる日を。

2008/11/30 (Sun)

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