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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[3246] 独りの夜と二人の夜
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


僕は孤独でひとりぼっちのいつの間にか部屋の押入の中で忘れ去られたほこりかぶった人形
毎夜 カセットテープで流す ラブソング
この悲しみを紛らすための歌などないが
ないよりはマシだと再生のボタンを今夜も押すんだ
やがて流れてきた甘ったるいラブソング

黒と白その二つのうちのどちらかひとつを決めるだけだけど それでいいのかホント悩む
アタマ壊れるほど真実がくだらなくて
いつもイラだっては壁を蹴り飛ばしたり
誰かに八つ当たりしたり

僕はかわいそうなドール 悲しくてもボタンでできた目じゃ涙さえ流せない、ただ悲しいという気持ちだけが咲いただけ
丸い真っ赤なお鼻から飛び出た綿がなぜか悲しい 手足さえ動かせないのに
なんだこの意識は
なんのための意識なんだ 神様 教えて
人形になんてなりたくなかったよ
それならずっと人間のあんたがうらやましいぞ 交換してくれ

嗚呼 独りの夜と二人の夜の中 どちらがどれだけ切ないだろう、もうやめだそんな詮索
それぞれの切なさを不意に重ねた夜
濡れた唇だけが真っ暗な部屋に妙に赤く浮かんでる 口だけが浮かんでるようだ
気持ち悪くなるほどのアロマの香りが僕の鼻をおかしくする
もう 純粋にはなれない 僕は汚れた人形
正しさもくそもない
清さも潔さももうここにはない
あるのは唯一 この綿が飛び出た鼻だけ
恋の傷跡です
いつか君が残していった切ない失恋の証だ
ほらごらん
今にも僕の鼻
やぶれそうだ

独りより二人でいるときの楽しさがいい
当たり前だ
でも
二人でいるのに悲しいってなんでだろう
それだけがわからない

きっと
きっと
きっと
あの恋は僕と君じゃ使いこなせないし転がしきれないから
だから
だから
だから
あの恋はすぐにろうそくが燃えきるように消えたのだろう
いつかの夜に……。

2008/12/06 (Sat)

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