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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[3283] 飽和現象 陰影日報記
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


石けんみたいに使いきり費やせば
ろうそくの蝋みたいにやがてなくなる
時と共に溶けてゆく
永遠にあり続けるものなんてなにもないんだ
形を成すもの形を成さないものみんなみんな泡となりいつかは破裂するよ
人の記憶の中で
誰かの心の中で
誰かがおぼえていたりはしないで忘れられるよ
みんな 誰の記憶にも最後は残らないよ
どんな どんな 有名な人も時の流れには勝てず幻の中に埋もれる つかの間一時をにぎわすだけのその場限り 時の人

いつか シャボン玉みたいに僕も大切な人の記憶の中にさえ残らなくなるかな
そしたら僕の存在はどこに生きていた意味や証を残せばいい?
大切な人に関する気持ちや愛情や笑いあった思い出さえ僕の中から消えたら悲しい
どんなにきれい事で紛らしても結局は忘れたらそれきり
いなかった存在も同じ

だから時々僕は思うよ
今という時間 今という場面 今という場所 そのすべてはなぜあるのかと
そして日々はなぜ続いてゆくのかなと

ただ今日も泡みたいにある程度飛んだら破裂するみたいに消える
それでもいやなことにその悲しみは明日も消えず僕の記憶の中で死ぬまでつきまとうから
死んだらなにも残らないくせにずっと自分自身を苦しめるおもりに変わる
重い重い足枷になる
でも僕たちは生きるのが仕事とばかりに不器用でも日々をつなぐ
不可思議だね
ただ生きたいが為に苦しみを背負い
程なく息絶える

同じ生き物でも違う光をそれぞれが放つから目立つ 寿命は違えども
たとえ消えてもきっと輝き続ける
信じよう 愚かなほど
はかないくらい短い命の鳴き声 生きている間だけの光ある自由
にゃーお にゃーお…
この世界 この現実はくたばったあとも僕をむかえてくれるかな 少しは憶えていてくれるかな
今はそれだけが心掛かりだ あまりにも存在が希薄な気がしてさ。

2008/12/10 (Wed)

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