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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[4064] エチュード
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][編集]


僕には今日 生きてること あたりまえでも
誰かには今日 生きてること あたりまえじゃない
そんな悲しい物語が 僕の住むこの街から離れたところでおなじ世界で起きてるんだね
こちらは朝でもどこかじゃそれの反対で夜の国では誰かが悲しい涙 浮かべてるかもしれないんだね

笑い事じゃないさ

でも嬉しいことがあった僕には 関係ない
ごもっともだろうけど なぜかそんなこと考えると笑うのも悪い気がするよ いつも
そのくせ誰かの喜んでる顔はすごく嫌いで
僕は身勝手で

だからこそ
僕は喜べないその人の代わりに笑うよ
かわいそうなんて言っちゃいけないんだ
僕には僕の人生がある 見えている景色が そこにある境遇が違うから
笑えたり泣いちゃったりするのも仕方ないさ

だからこそ
だからこそ
僕は笑いながらも
名前も知らない
どこかにいる
言語も肌の色も違う誰かに送るんだ
花束のようにささやかな歌
大げさなものじゃないけど歌うよ

まるでやさしくって誰かの弔いのような僕なりのエチュード

それだけで僕の笑顔や僕の無神経さはいくらかゆるされて落ち着くはず
空に昇る 言葉
今 あでやかに空を朝焼けに染めて

僕は大きなあくびをしたあと少しやさしくなれた
その瞬間
命の何か 新しい 真実を知った気がした

イメージの中のお話

笑い話にされても
僕だけは笑わないでいるよ
いつか誰かにみとられた愛しい誰かよ
僕が歌うこれでも精一杯のエチュードとともに安らかにご冥福あれ

それが僕の気持ちさ。

2009/05/10 (Sun)

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