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甘味亭 真朱麻呂の部屋


[610] 繭と糸
詩人:甘味亭 真朱麻呂 [投票][得票][編集]

幼い私はなんら罪悪感もなく
ほぼ毎日のように小さき命をこの手で殺めていた
列になって餌を運びながら歩く蟻を無表情で踏み潰す
残念ながらこの世界では蟻を殺すことに対してには罰則はない
だからといって平気で殺す私は幼いとはいえ今考えればとても恐ろしく思う
母はそんな私の将来を不安がった
私はそんな不安など気にもせずに罰せられぬ過ちを犯し続けた

そんな私は大人になってからも何ひとつ変わることはなく
毎日毎日退屈な日を送っている
まるで繭にこもったまま死んでしまった蚕のように
私はこの部屋で死んだように閉じこもってばかりいる
私に蝶のようなキレイな羽はいらない
飛び立つための力も必要ない
ただこうして孤独を見つめているのがお似合いだ
永遠の日の当たることのない日陰の中で
私は羽(きぼう)を失ってしまった蛾のように
この部屋で死にゆくんだ
誰にも看取られることもなく
ただ独り静かに安らかに眠りにつく
それが孤独を背負ってしまった者の最期だから
私をそれに習って死を迷わず受け入れるんだ
私を産み落とした母へのせめてもの罪滅ぼしとして私はあなたに最期に私を産んでくれてありがとうと言いたい。

2007/03/06 (Tue)

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