詩人:甘味亭 真朱麻呂 | [投票][編集] |
どこだか知らないけれど名前も知らないけれど
幻の花園がどこかに在るらしい
一年中寒々とした冷たい風が吹いていて
草花は枯れきり
空はいつもどんよりとした不安になりそうな曇り空で
鳥といえば烏ぐらいがたまに気晴らしに飛んでくるだけだ
人は誰も住みたがらず
何年も前から空き家となっている住めそうもない蔦の絡まる
家の原形をなくした廃墟がいくつか並んでるだけ
そうしていつしか人々からすっかり忘れ去られて
幻になってしまった
悲しい悲しい花園
孤独で嫌われ者の僕が住むにはもってこいの場所だと思う
邪魔するもの遮るもの
なにもないから
僕はここでなら伸び伸びと暮らせるよ
美しさなんて欠片もないほどにかけ離れた
汚いだけの花園
でも僕にとっては楽園だ
僕はこの花園に
名前を付けたんだ
誰からも忘れられた
僕とおんなじ孤独が板に付く
全くというほどなにもなくただ憂うつなだけの『憂うつな花園』
錆び付いて今にも壊れてしまいそうな
ブランコがキーキーと嫌な音を立てて揺れている
ただそれを見つめているうちに一日は過ぎる
住むもの、暮らすものを憂うつにさせる
憂うつ以外の何物でもない
だから『憂うつの花園』。
[前頁] [甘味亭 真朱麻呂の部屋] [次頁]
- 詩人の部屋 -