詩人:アル | [投票][編集] |
欠ければ補ひ充てて、満つれば溢るるままに。
月の満ち欠け増えかつ減づるには非ず。天然自然かくの如く、吾もその一つなれば、照り返して輝かん、須臾の間を。見掛け様々なれど天理天命は棒の如く人中を貫くなり。
瑣事の紛塵を払ひ本質を掴むべし。
逢はざらぬ
故に面影
偲ばるる
雲阻むとも
さやかなる月
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未練レンレン
寂しいrain
歩道橋から
見下ろした
行き交う車の流れ
最後に海が見たいと
落とした涙の雫
雨に紛れて
未来ライライ
見えないlane
信号待ちで
無意識に見る
君のいない助手席
最初から散るのを
知って咲き初めた
風に吹かれて
春は三日と晴れない
日は直ぐに暮れない
夜は一人で居れない
未練レンレン
超えてく試練
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常に得体知れぬ物に背中焼かれ、一つ一つに打ち込めぬは何故やらん。己れの些事にかまけて人の大事それと知りつつ見過ごし、後々繰り言にて気を病むなり。野茨の棘あるは花美しきを以て許さるる疵なり。美しくもあらず、棘許りならば誰ぞ見留めて歩み止めんや。花も棘も無きはさらなり。毒にも薬にもならねば何しに生まれ出でにけるらん。
また来る春にと等閑に構へ居れば、朝を待たず夜露に腐され、或は思はぬ天変地異起こるやも知れず、人の世は定め無きこそ定めなれとぞ。
欲得に極まりなく、己れの真なると覚しき姿許り追ひても本意にあらで疲弊するのみなれば、己れ転ばざるを気に懸くるよりは人を先に支えよとなん。然る後に己れ如何にと見れば立ちて居るなり。人支えるに必死なれば自ら転ぶ暇さへ無かりしが故なり。
寒月や
我歩めれば
動く陰
世の荒浪を
紙魚渡り往く
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万物は亡びゆくなり。
況んや象無きものをや。
言葉乱るるをば殊更に嘆く人々いつの世にもあまたあれど、塞き敢へぬ流れに棹差すが如く無益なる業なり。言葉も生き物にて日々に長じゆきて老ゆれば廃るるは道理なれば、強ひて抗ふは見苦しき事もありなん。言葉変はりゆくを嘆く人々反りて源氏、平家なんどの物語を古語にて読めるは至極稀なり。
言葉は不帰なる古里にも似て遠くにありて哀しく歌ふものならんや
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節分過ぎにければ、彼方此方に鬼の外に弾かれあぶれたるらん、不可思議なる事あり。
我が貧しき庵は戸口に人の暫し立てれば自ら楽の奏でられて、内なる画面にて訪なふ者誰なるか知らする仕掛けあり。先程来、頻りに音のすれば、画面を見れどもさらに人の影さへなし。表はくるぶし近く迄雪積もりてあれば、影は見えずとも足跡だに動くらむとうち見守れど、其の兆し一毛も無し。「妖し」と思へども恐るるにはあらず。鬼は人の魂にて、人は死ぬれば等しく神仏なり。されば人を害する者にあらざるは道理なりと存じ候ふものから、寂しとあらば我方につれづれ語りに参り来よとこそ思ゆれ。
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過ぎ去りてみれば春の嵐今は遠く、雨風凡てを薙ぎ倒し瓦礫累々たる有り様一方ならざれど再び穏やかなる日々に治まり返れば虚ろなる魂に人の皮ばかり着せて世を渡り往く心許無き宿世なりとぞ思はるる。
振り返る縁は塵だに残さず、消息さえ通はぬ果てしなき空へ霧と消え行きにければ、生き別れ死に別れ、いづれの不仕合せか甚だしき。生きるとは祭りの如きものなりと言ひし人なれば祭りの後かくはもの寂しくあるらん。
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ひとたび慈悲の心起こりて仏を拝み奉るにも金子は要るべかんめれど人の誠は買へぬものなり。
内なる私利私欲の鬼の角を矯め得ずして、その傀儡となり果てんは最早人ならずして変じて鬼と化したるなり。煩悩の嵐吹き過ぎれば、また人に立ち還り己れ取り戻さんとぞ思はるれども失ひ散づるもまた多かるらん。
人を鏡に己れを映しても自らの姿そこに在らざるは理にて、己れの道は己れ一人己れの為に走るなり。先頭走る者の敵は己れ一人にて較ぶるべきものには非ず。合ひ競ひ憎むべき相手は自らの邪執、内なる鬼ばかりなり。
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予め思ひ定めたる方に違ひて思はざる事出で来たる時に人の器は試さるるものなり。慌てるは誰しも同じなれど困じ果てて不始末に終れば本も子も無きは無論の事、腹立ち紛れにぐるりに当たるは論外にて人に嘲け笑はるるは必定なり。
追ひ風吹けば進むは当然にて風に逆らうこと能はざる折りには暫し漂ひ居るべし。自ずから風向きも変はるらんと一呼吸置きて慌てざるが肝心なり。然る後に慮りて動くべし。
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胸に抱ける理は夢の中にて画に描ける餅さながらに現には叶わぬものと思ひ定めて予め諦念のくびきに自らを縛るは生きながら死ぬるに等しき業なり。人はこの濁世に生まれ落つるや否や死罪を申し付けられたる罪人の如き者なり。各々に猶予の暇は違へども誰ぞ辞世の刻を免るるを得んや。然れば心に仁を育み、義の月に照らされ、礼を尽して智の刃を研ぎ、信の御旗を風になびかせ前のめりに進むが勤めとぞ存じ候べき。