詩人:黒烏 | [投票][編集] |
遥か彼方に社堂見上げ
風凪ぐ灯火の下 静けし
夕暮れ 二人を朱く染め
君影草 しあわせに笑った
『いつかまた この地で』
二人包んだ夕闇は
町の内奥へと差し込みつつ
黒く 嗤う
赤き禍事訪れし
さだめ引裂いだ其の日
しゃん しゃんと 揺れる
「さればお国の為。
僕はこの身捧げましょう」
「ああ、神様!
どうか彼を見放さぬよう!」
せめて後少しばかりと
彼の胸で
君影草 揺れた
[時の掟を 破りしは
我等共々 堕ちるのだ]
堕ちよ
堕ちよ
堕ちよ
堕ちよ
夜帷 縫い込め
風吹き荒んだ折
――白い箱に入り
ちいさなちいさな石ころになって
彼は 帰ってきた――
重い花つけた君影草
ぽきりと折れた
堕ちた
花伝う血涙 木箱すがり号哭
憎憎しと責めあぐ
彼の遺愛も無ければ
代わりの石ころ抱き
夜もすがら 這いずり廻る
「何が正しくて 何が間違っているのか
誰か 教えて下さい 誰か」
君影草は夜明けの篝火に紛れ
ただひっそりと 枯れていた
枯 れ て い た