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トケルネコの部屋


[137] バビロン虜囚
詩人:トケルネコ [投票][編集]


私は右目が見えない
比喩ではなく事実がそうさせる

私は左手を知らない
事実ではなく喩える世界において


私は罪人のようにイラクサの葉を咬む
私は神々の剣に、鞘に、こびり付いた血に憧れる


地図を呑む者 それをカササギと呼ぶ
その鳥の往く所 悲鳴が鎖に繋がれ溺れている

この先には道もなく街もなく ただ太陽が淡い十字架の影を削っている
言葉を谷に放る死人は やはりケルビムの翼を疑うのだろうか…


あなたは何者だ? 何者でもないと識りながら 
未だ世界を喩えんとするその反照の眼差しは

聖なる梢にとりどりの羽を飾っては ついばむ実は種となり
やがて乾いた大地に堕ち石と化す


正義を語りその風下に追い立てた者達の影は?

余所人に打ち殺さした獣達の数は?

あなたが衝き上げた言葉の槍は何を傷つけ
丘の上に誇らしく飾った茨の冠で幾度その血を欺いたのか?


見ず知らずの盗人に献上した名前はもうどこにもなく
姓もなく地図もない星に産まれた赤子は泣くことすら許されない
孤独は踏まれた炭のよう空をただ黒く染める


この道に在る者は迷い 迷う者はやがて道そのものとなる


真実を騙るは誰か?
お前か、私か、それとも名も無き生贄か

この道である者は殺され神々に供される 
ならば殺した者の魂は何処へ繋がればよいのか


私は神々の剣の、鞘の、こびり付いた血で新たな名を刻もう


−ゼルバべル−


かの凶々しき果実

バビロンの種子と


2010/02/24 (Wed)

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