詩人:どるとる | [投票][編集] |
夕暮れ、赤く染まった 街の空
遠くに見える 工場の煙突の煙
ゆらゆらと 東に流れていく
この悲しみの捨て場を探している
僕は一人で 寂しさに声も出せず
子猫のようにふるえているよ
見えない音が闇の中に降って
いくつもの 雨粒が屋根にはじけて
まっ逆さまに落ちていく
痛みは残るよ 傷痕を残して
小説にはさんだ栞のところまで
読んだ物語の続きをまた読んでいく。
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夜明けにはまだ遠い 薄暗い街
ため息さえ 凍りついて白く煙るよ
コートの襟を立ててもまだ寒いから
君の 笑顔を浮かべてはほくそ笑む
今か今かと待っている「その時」を
何度でも 繰り返していくのだろう
寂しさと 嬉しさが入り交じったような
どっちつかずの気持ちを道連れに
互いの顔も わからない くらいの闇の中で
お互いの 吐き出す息だけが 目印
そこにいるんだね 笑ってるのかな
泣いているのかな 言葉にして伝えてよ
坂を登りきって 振り返ればもう
朝日が 辺りの 闇を蹴散らすから
積み重ねる時間の 重みとか 意味とか
考えながら どうでもよくなった眠った
果てなく 遠い未来をイメージしては
見えない未来に 怯えて泣いていた
避けられない未来を 運命と呼ぶなら
あなたとの出会いもまた運命だろうか
寒そうにうずくまる猫は 寝返りをうってそのついでに暢気にあくびをひとつ
遠くに見える灯台の光を 目指して走った
取り立てて何の意味もないけれど
なにかが そうさせるんだよ
心をぐっと動かしていくんだよ
ペダルに力を込めてもうひと頑張り
君の嬉しそうな笑った顔を見つけたよ
愛とは少し違う感情だ
だから 僕らは離ればなれ
でも つながっていたよ
見えない 何かで
不確かな今を 確かに明日につなげて
寂しさと 嬉しさが入り交じったような
どっちつかずの気持ちを道連れに
互いの顔も わからない くらいの闇の中で
お互いの 吐き出す息だけが 目印
そこにいるんだね 笑ってるのかな
泣いているのかな 言葉にして伝えてよ
坂を登りきって 振り返ればもう
朝日が 辺りの 闇を蹴散らすから。
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煙草を 二、三本吸ったあたりで夜が明けた
窓の外にある ありきたりの景色に
投げ掛けた 問いかけは転がる石になって
やがて 穴の中に落ちてしまうだろう
声に出さないと 気づきもしない愛とか
冗談じゃないわと 駆け出した
その背中に 映してた空は くすんで
寂しささえも 笑い飛ばしていた
目の前にあるものがこの世界の すべてなら
過ぎた時間や 写真の中の人々は
生きた 足跡さえ風に消えて
明日の 旅にはついてはこれず
地図を広げても 行き先は ぼんやりとした霧の中
踏み出した道だけが 地図に記されることを知ったのは
つい最近のことだったりするんだ
ため息さえ 吐き出せば 空気を揺らして
小さな風を 起こすよ
旅立とうと 綿毛が野に放たれた日
見送る人は誰もいない 影も形もない
泣いて笑った 今日の思い出は
明日になれば 記憶から遠ざかって
忙しさのあまり忘れてしまうよ
風の上に吹きさらしの足跡だから
行き先も知らない電車に飛び乗って
僕は 何処でもない何処かを目指した
宛もない 旅の行く末を占う花びらは
最後の一枚になるまで千切っても答えは 出ないよ
そんな思案は 往生際が悪いよ
その背中に 映してた空は くすんで
寂しささえも 笑い飛ばしていた
目の前にあるものがこの世界の すべてなら
過ぎた時間や 写真の中の人々は
生きた 足跡さえ風に消えて
明日の 旅にはついてはこれず。
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僕らは言葉もなく なすすべもない寒さにふるえた
今持てるだけの温もりあるだけ持ち寄って
慣用句みたいな 「愛してる」なんかよりも
もっと心を近づける方法はないかな
まだ来ないかなって もう少しかなって
三番線のホームで君を待っているんだ
最終よりいくつか手前の電車から降りてくる君に遠くから手を振って
どれだけ寂しかったのか 説明するより先に
君を見つけた僕は 安心して
大人げなく泣いてしまったんだよ
寒いから首に巻いてねと手編みのマフラー
僕の好きな色を知っている 君は赤い毛糸を選んでくれた
刺繍が 入っている世界にただひとつのマフラー
君の手には絆創膏が何枚も貼られてた
見上げた夜空に 流れ星がひとつ
祈るのは勿論 君の幸せ
歩幅をいちいち合わせるほど できた人間ではないけど
何度も振り返って君を気にする
ちゃんとついてきてるか心配だから
仕方ないから手をつないでもいいよ
本当は僕がただ手をつなぎたかっただけ
積み重ねた 時間の中にある
思い出が 両手の指でも数えきれないほど増えたよ
そしてまた ひとつ何気ない言葉や仕種が
思い出になってく
僕は今さら 当たり前なことに気づいたんだ
僕は本当に君が好きなんだってことに
気づいたらなんだか恥ずかしくなった
最終よりいくつか手前の電車から降りてくる君に遠くから手を振って
どれだけ寂しかったのか 説明するより先に
君を見つけた僕は 安心して
大人げなく泣いてしまったんだよ
いつでも君が 僕に笑いかけてくれることが
幸せで それを確かめるたびに 泣いてしまうんだよ。
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朝日が 眩しくて目を細めて
見上げた空に 雨上がりの虹を見つけたよ
下ろし立ての スニーカーで駆け抜ける
白い息を切らして あの坂のてっぺんまで
競争だって 君をけしかけて
むすんでひらいて 手を打ったあの日
笑って 泣いて それで日は暮れて
気づけばもう こんな時間で
万華鏡 覗きこんで見えた 未来は
嘘じゃないんだってまだ駄々こねて
公園のブランコで 靴を飛ばしてる
変わらない ものなんかないんだって
あざ笑った 僕をたたき起こして
傷つく勇気くらいはまだあるんだから
その拳で 諦めそうな僕を殴れ
瞬いて消えた 星の名前は知らない
ジャングルジムによじ登って見上げた
星空 今でも忘れない 思い出のひとつだ
こうして 大人になった今もまだ
引き出しを開けては回想してるんだ
やがて大切なものは何も見えなくなって
それが大人になった証なら いらないな
「みんなが言う大人」には 悪いけどなりたかないんだ
笑って 泣いて それで日は暮れて
気づけばもう こんな時間で
万華鏡 覗きこんで見えた 未来は
嘘じゃないんだってまだ駄々こねて
幻でもいいからまた会えないかなって
手当たり次第目を凝らして探した
光は 尾を引いて落ちた 僕の瞳の中に吸い込まれてく
ふれられないけれど確かにここにある
目を閉じて広がる 夜空に探すよあの星を。
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ポケットの中の煙草を 探る右手が
残念そうに 引き抜かれたのは
夕方を少し 過ぎた辺りの夜の手前
月を撫でる 猫の長いまだら模様の尻尾が
流れる音楽にあわせて左右に揺れる
悲しみは 言葉にすれば 涙を
いくら流しても 語りれないから
僕は 悲しみを通り雨と笑うよ
角砂糖積み上げて崩しても
何も生まれやしないの
それでもいいの 気が紛れるなら
今は少しだけ 優しい 人のふりをしてて
月の明るい夜に涙なんか見せたくないから。
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重力が空から音もなく降りてきて
数多の生き物を地面に縛りつけている
獣は 野を駆け回り
補食を 繰り返す
名もない文明の中にある小さな暮らし
重力の中にいてもまだ
荷物から解放されない
僕らは 鉛のような
悲しみを 抱えては
空を見上げ 何度でもきりもなく 死にたいと思うだろう。
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花の香りも
雲のかたちも
まるで曖昧だ
この世界に
影を落として
風の中に立つ
いくつもの
言葉を
いくつもの
イメージを
膨らませては
広げていく
いくつもの
つながりを
いくつもの
結びつきを
僕は 持って
生きている
風の揺らぎも
虫のささやきも
聞こえないから
心を敏感にするのさ
耳に手をあてるように
幾重もの
歴史が
膨大な
時間が
絡まっては
ほどけていく
雨が滴るように
声を落とすように
積み重ねる
思い出の中に
虹の たもとに
夜を 広げて
星をあおげば
いくつもの
大切な それらが
あなたを 彩る。
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たったひとつのイメージが膨らんで
真っ白な世界に たったひとつの歌になる
声を紡いで 糸を巻くように
まだ出会ったこともない
新しい扉を開けるとき
この世界は
また 新しい色が 友達になる
パレットで いくらかき混ぜても
出来ない色を あなたは 持っている
その事にあなたはまだ気づいてない
途方もない 色の溢れた世界で
まだ知らない色がこんなにある
ほらね。
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雨上がりには虹を 探してしまう癖が
なかなか抜けなくて
透明な傘から空を 透かして 見てる
宛もなく 雲が 流れていくのを
ただ 見ているだけで日は暮れてしまう
吐き出す吐息が白く染まるほど
まだそれほど寒くはないのに
あなたを思うとね 心なしか 少し寂しくてぐうの音も出ないよ
やがていくらも待たずに来た 夜に
開けた窓を閉めて
余裕があれば星を数えて 夜更かしだ
どうして この心は自分のものなのに
一番近くにある 気持ちさえ読めない
言葉にならない気持ちに落ち込んだとき
どんな言葉でも 名前をつけられないよ
あなたを思うとき あなたも 僕を思ってくれてるのかな
しんしんと 音もなく 胸をかすめていく
雪は 窓の明かりに寄り添うように溶けて
これから始まる長い夜を 見届けるだろう
そして夢から目覚めた僕の 家の小さな窓の外は 白い冬
吐き出す吐息が白く染まるほど
まだそれほど寒くはないのに
あなたを思うとね 心なしか 少し寂しくてぐうの音も出ないよ。