詩人:どるとる | [投票][編集] |
夢幻の如しなり
僕は影になる
見えないままの道しるべ 時代の先を行く 舟は何処へ?
何ひとつ わからないならば ただ心ゆくまま
晴天より降る雨は
数千の雨粒の
子を伴って
この世界を濡らす
肩越しに聞く雨音
寂しさならもう
言葉のガーゼで
隠したよ 傷跡も
皐月の頃に
覚めやらぬ夢の中
見たよ 聞いたよ
あの人の下駄の音
カラコロと
石畳を踏み鳴らす
それはまるで
幸せを音にしたような。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
何にもない暮らしの中にある光
それは僕の毎日を照らすささやかな光
サテライトのよう
海を見渡す 灯台のよう
誰にでもあたたかい光を届ける
君と一緒に笑って
君と一緒に泣いて
君と一緒に生きている
ただそれだけでいい
ごく当たり前な 暮らしの隅々に行き渡る愛
また今日が 積み上がってゆく 絶え間ない積み木遊び
ラララ 口笛吹き鳴らし 歩いていこう
ラララ 歌は流れる 悲しみの側に
いくつもの言葉の中に またひとつ ふたつ 思い出が増える
愛してる ただそれだけ。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
裏路地 夕景 ひとり風に包まれていた
誰かの影が見えるよ
手を振る影が だんだん遠ざかる
今日の痛みを 残したままで
消えてゆく 今日という一日
寂しいのは嘘じゃないから
どうかずっと側にいて
押し寄せるのは さよならのさざ波
引いていくその時 命のかけらをさらってく
ちっぽけな貝殻のような白い思い出
あとにはただ 何事もなかったように
静かな砂浜のような 夜がそこに広がっているだけ
やがて屋根を飛び越えて
訪れる夜明け。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
ねえ 愛ってどんなものを言うんですか
ねえ 愛されているってどんな気持ちですか?
たとえば 愛されたことのない人には
愛なんて無縁なんだろうか
たくさんの人の中に どれだけの愛があって そのすべての人が おなじ心を持ってはいない
だから愛の形も人それぞれ
見事なまでにすれ違ってしまうよ
誰かと ただ 笑って
泣いたりして
たまには喧嘩して
でもまた仲直り
そんなことをきりもなく繰り返して
なんとなくわかっていくんだ
愛されているって
抱きしめられてるって
きっとそれだけでいいんだよ
見えないはずの愛が見えたような気がするから
本を読み進めていくように生きていく
読み飛ばすようにいい加減に生きても
読み終わった前のページには戻れない
それがどんなに素敵な昨日だとしても
たくさんの人の たくさんの物語が おなじ世界の中に
ありとあらゆる あらすじを伴って
今日も様々な場所で続いているんだ
規則性のない複雑なストーリー
書き手もいない 読み手もいない
ただそこに生きるあなたがいて
他人の僕は 人の生き様を眺めている
そんな僕の今日 そんな君の今日
おなじ世界の中 当たり前のように
雨に降られたり
陽射しに 焼かれたり
絶え間なく続く二人のストーリー
けして交わることはない でも愛というなら間違いじゃない
目をそらしているだけで 見えていないものばかりさ
耳を塞いでいるだけで 聞こえてないものばかりさ
この世界は
誰かと ただ 笑って
泣いたりして
たまには喧嘩して
でもまた仲直り
そんなことをきりもなく繰り返して
なんとなくわかっていくんだ
愛されているって
抱きしめられてるって
きっとそれだけでいいんだよ
見えないはずの愛が見えたような気がするから。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
忙しなく流れる街並み
夕暮れは空をあかね色に染めて
僕は少し冷たい風に包まれて家路を歩く
なんにも恐れることなど無いはずなのに
どうしてだろう
心は見えない不安にふるえてしまうよ
人混みの中にいても拭えぬ孤独
寂しさを紛らわすなら 誰でもいいわけじゃない
だから、僕はずっと寂しいまま
たまには泣いたりもする
本当の孤独は 人の心の影に棲み着くもの
身を守るために見えない鎧を着て
とりあえずの打開策として 誰かの優しさに甘えてみるのも
悪くはないかなと
揺られてみるのさ月明かり夜明け前の誰もいない遊歩道
答えはいつも風の中に 消えてしまう
悲しみはどんな幸せの中にだってあるものなんだよ
誰ひとり 生きる悲しみから逃れるすべはない
だからせめて誰かの優しさに 寄りかかって
愛なんてきれいごとで 傷ついた心を慰める
僕もいつか 会えるかな
寂しさを紛らわすなら 誰でもいいわけじゃない
だから、僕はずっと寂しいまま
たまには泣いたりもする
本当の孤独は 人の心の影に棲み着くもの
悲しみはどんな幸せの中にだってあるものなんだよ
誰ひとり 生きる悲しみから逃れるすべはない
だからせめて誰かの優しさに 寄りかかって
愛なんてきれいごとで 傷ついた心を慰める。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
心を染めるのはなんだろう
全くの無から生まれる色彩
それは色と呼ぶにはあまりに透明で
不確かなものだからきっと誰も気づかない
僕らの周りにあふれているたくさんの色の中に
僕らの心の色はそっと紛れるように
ほんのり景色を色づけている
季節の中に そっと咲いている
小さな花の花弁を染める紅色
風を 染めるのは僕らの心
ほらどんなふうにだって見える
たとえば幸せなんてものは 見えないだけでさ
目を閉じ耳をすませばそこにあるんだよ
彩り豊かな 実りの季節は
田畑に 黄金の稲穂を繁らせる
そんな ありふれた当たり前の中に
ささやかな 香味料を添えるだろう
引き立て役は そんな些細なもの
ああ足りないものが多すぎる
わからないことが多すぎる
それでも僕は歩いていくのさ
いくつもの夜と朝を乗り越えて
たとえば正しさなんて概念は
はっきりとした形を持たないもの
そんなことに左右されなくていい
季節の果てにそっと波打ってる
新しい夜明けは世界の果てまで
朝を届けて 僕らが立ち止まる時
見たこともない色彩で世界を染める
たとえばそんな色に僕も染まれたら
きっといつか 忘れてしまった
涙を思い出して
海が出来るほど 泣くのだろう。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
「なんとなく」
「それとなく」
そんな言葉が好きなのは
言い切らず 言い尽くさず
曖昧で いれるから
猫はただ 人語を喋れぬその口で
ただみゃあと 何事かを 呟くだけ
見えない絵本の表紙を開いたら
言葉を 星屑みたいにばらまいて
殺風景なこの部屋に明かりの代わりにともそうよ
ねえ 口下手な夜もたまには
つぶやくこともあるんだな
寂しいよとか悲しいよとか
僕の口をかりてしゃべり出す
おかしなこともあるものと 鈍感な猫は餌にまっしぐら
新しい物語の冒頭にたどり着いたら
そこから始まる朝なのさ 夜明けは近い
目覚める街を 追いかけろ。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
誰かさんの流す涙や
空を染める青
そこにある
規則正しい時間と
いつか忘れた
笑い方
猫が鳴くように
ただあるがまま
どこまでだって
ありふれていたいだけ
僕を 包む 一面の青に すべてをあずけて
夜や朝の中に眠る小さな幸せのかけらを
あますことなく 拾い集めて それを僕らは大切に抱きしめるんだ。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
ああ どうして
食べたくなるのか
甘いもの
誘惑には 勝てない
うまいもので
溢れかえった
この世界
あれも食べたい
でも太る
あれも食べたい
気づきゃ
腹は出て
まるで狸のお腹
拝啓、べつ腹さん
なぜあなたは
すぐにお腹がすくの。
詩人:どるとる | [投票][編集] |
病床に横たわる
病人はとうに
三十を越え
いい歳をして妻の看病をうける
食べたいものは?
欲しいものは?
いつもは見えない
妻の優しさが見える
いいよ、何もしなくて ただそこにいて
ずっと 僕を好きでいてください
それだけで 風邪なんてすぐに 治るんだ
それだけで幸せになんて すぐになれるんだ。