詩人:どるとる | [投票][編集] |
数センチの間をあけて歩く歩道に
わざと置き忘れられたように
花びらがたくさん落ちている
春がまだ少し夏にはまだ早いよと言うように
その一歩から どこまで行けるだろう
僕らはただ一歩一歩つないでゆく 気の遠くなるような地道な努力 つつましやかな頑張り
春はもうじきこの街をあとにして
桜も来年までもう見られないね
あんなに 寒かったはずの街も もう
薄いシャツ一枚で 歩けるよ
足跡は 続いてゆく僕らが歩いた道に
これは誰の足跡だろう 思いの外、真新しい
宛のない想像は 真っ白な画用紙に
夢を描いて 間違わないように
引いたレールの上をたどってゆく
たまには 無謀にもなるさ 狡さも必要 優しくなんかないよ
これが物語なら ページをめくるたび
あらすじ通りの結末を目指すのに
どうやら僕らの毎日には そんな便利な近道は ないようで
だから途方に暮れてしまう
ポケットにしまったままの夢
なくしたことにして見ないふりしてる
こっそり 取り出して眺めては
涙なんか流したりしてる僕がいる
風はどこに 吹いてゆく 足跡も残さずに
見上げた空に 星がひとつ 願いは届くかな
離れたり 近づいたりする歩幅
強がるふりして 寂しがる
隠した 涙は正直で気づけば
素直になって 君の姿を探してる
名前を呼んだりしたら 来てくれるかな
頼りなくて丸まった背中をさらに丸ませて
春はもうじきこの街をあとにして
桜も来年までもう見られないね
あんなに 寒かったはずの街も もう
薄いシャツ一枚で 歩けるよ
足跡は 続いてゆく僕らが歩いた道に
これは誰の足跡だろう 思いの外、真新しい。
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近づくでもなく 離れるでもない感覚で
歩幅は狭くなったり広がったりする
波紋みたいで 思わず笑ってしまうよ
ただの会話も交わしたそばから物語
金木犀の香るなだらかな坂道は
ゆるやかに 空の果てまで続く
坂道を降りたところの 小さな喫茶店
君は珈琲よりもメロンソーダ 子供みたいだね
饒舌でもなく かといって寡黙でもない
話が上手いわけでもないから退屈もする
でもそんな退屈までちょうどいい間
小説の行間のようなちょっとした息抜き
いつの間にかどちらからともなく差し出した手を つないでる
手と手で結ぶ 少し不恰好な蝶々結び
隙間もないくらいに 互いを思う気持ちで満たされてる
積み重ねてく 日々は積み木みたいだ
ジェンガみたいにさ所々 出っぱって
今にも崩れそうだ だけど絶妙なバランスで うまい具合に立っている
金木犀の香るなだらかな坂道は
ゆるやかに 空の果てまで続く
坂道を降りたところの 小さな喫茶店
君は珈琲よりもメロンソーダ 子供みたいだね。
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覚めた夢のあとにもまだ消えない
あなたの面影が 寄り添っているよ
時間から 外れた場所で生きる
あなたの 笑顔を思いながら
色彩の雨は モノクロを塗りつぶしてく
それは波にさらわれた貝殻の模様
どしゃ降りが 窓をはげしくたたく
さよならもどこか優しく頬を流れる
海を渡る 椰子の実ひとつ 宛もなくさまよう
白い砂浜 大きなパラソル 空と海の青。
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波にさらわれてゆく
ひと欠片の命が たどる足跡を 雨が消してく
さよならも 輝いて
手を振る影が 遠くなって
明日にはまた 側にいる大切な人。
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街中に音符の雨が 降っている
ドシラソファミレド 人の足音も 話し声も
それは素敵なメロディ
涙が 地面に落ちるまでの間に
僕はそっと君の 涙を手のひらで
こぼさず掬い上げたいのに
物語に そっと雨が降り注いで
レコードの針 落とすように 音が溢れる
悲しいよって 言っているように聞こえたの
少し遅れて差し出す手が 傘を握らせるけど
君は敢えなく涙に濡れてしまう。
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糸を紡いでゆく きれいな螺旋になる
六角形の家を 糸だけでつくる
その八本の便利な手足で
虫じゃないよ 六本足の虫じゃないよ
蜘蛛は てらてらの
夜明けに輝く巣の真ん中で
そのたくさんの瞳で何を見てる。
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黄金色の風が 闇をさらって
始まる朝の ページを一枚めくった
夜明けの街 いつも通りの時間に日は昇り
いつも通りに 僕は目覚ましに起こされた
テーブルに並んだ珈琲とマフィン
軽く平らげて お腹を膨らませたら
まばゆく輝く光の絨毯を広げよう。
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同じ屋根の下で 同じ釜の飯を食べて
同じ時間を過ごし同じようなことで悩んで迷って
でもすれ違うよ もしかしたら他人よりも
憎んでしまうかもしれない
裏切ってしまうかもしれない
でも 肝心なときはいつでも
ひとつになって どうしたら
うまくいくのか 真剣に考える
手をつないだら離さないよ
生まれたときから僕らは
どうしようもなく家族だ
泣いて笑ってたまには怒って
喧嘩してもまた何度でも
仲直りして明日にはけろっとしてる
巡りあったことは偶然なのかな
それとも運命なのだろうか
そんなことを考えながら
血でひとくくりにつながった輪の中にいるよ
夕暮れに沈んだ 街は項垂れて
元気なく 影を落としている
素直になれず傷つけた 昨日を反芻する
言い過ぎたかなあなんてあとで思い病むのが
いつも 変えようと思っても変わらないことだ
一緒に洗濯しないでという娘
会話もない息子 愛想のない妻
理想と現実の差
小さかった頃はあんなに
かわいかったはずの子供たちが
いつの間にか大人になって
生意気な口を利くたびに
すぐに手を出すようになって
叩いた 拳を見つめながら
泣きながら どうしてこうなってしまったのか
殴られたほうももちろん痛い
でも殴ったほうも痛いんだぞって
お決まりの台詞言いながら 素っ気なくごめんって 言ったよ
言葉を探していた 頭の中に 散らかったたくさんのそれらしい台詞を
これでもないあれでもないって 模索しながら 諦めそうになりながらも
父である自分を 思い出して 伝わらずとも 言葉を 語り聞かせてく心を込めて
その拳には 厳しさと優しさが 握られている。
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悲しいときは必ず誰かがそばにいてくれるほど
みんな暇じゃないしそれを求められもしない
円周率から 体にあるほくろの数まで 覚えてるのに
記憶をさらってみても 満足に人を愛した試しはない
大丈夫、大丈夫って言い聞かせた
あの 夜は どこまでも朝を遠ざけたの。
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浴衣を着付けてもらったの そう言う君に
付き合わされて 祭りに 行った数年前の夏の夜
あまり人混みが 好きじゃないけれど
君の言葉にはなぜか 断れずに了承した
ほら見たことか 思った通り 人でごった返していた
神社の長い階段下の 夜店で 綿菓子を 頬張り笑う君に むくれてた
これ見よがしな 僕の 態度に 少しも苛立つこともなく
隣にいて笑ってくれる
多分僕は君のそんなとこに惹かれたんだろうなあ
そんなこと考えながら 歩いてる
呼び掛けた僕の声に振り返る君の背中に
最後の花火が 打ち上がるよ
夏の終わりを そっと 飾るように
三日に渡って 続いてる夏祭りの最終日
今日も 行こうって誘われて 出掛けた
君のうなじにあたりに 夏を見た
ただでさえ 暑いのに夏はさらに暑く半袖になってもまだ暑い
僕の半袖姿に あなたも浴衣着てくれば
よかったのになんて今度は君がむくれた
ほほに作った小さなかわいい 膨らみを指で押してつぶした
ただ一緒にいるだけで 楽しいのに
それ以上何もしてあげられない
自分があまりにちっぽけだ
でも 君はこんな僕さえ笑って
受け入れてくれるから それがまた申し訳ない
たくさんの人の中ではぐれそうな手を
必死になってつないで 君と歩いたね
ガヤガヤとした雰囲気の中 僕は君に気持ちを 打ち明けた
聞こえたかなあ 聞こえなかったかなあ
返事はすぐに わかったよ
少し離れたところから君は僕に
駆け寄って 少し泣きながら
僕を抱きしめた いまだ忘れられない
温もりと香りが瞬時にはじけた
これ見よがしな 僕の 態度に 少しも苛立つこともなく
隣にいて笑ってくれる
多分僕は君のそんなとこに惹かれたんだろうなあ
そんなこと考えながら 歩いてる
呼び掛けた僕の声に振り返る君の背中に最後の花火が 打ち上がるよ
夏の思い出を締めくくるように。