詩人:どるとる | [投票][編集] |
パレットの中、黒はつぶやくんだ
僕は何色にも染まれない色だと
でも白が言うよ 僕と混ざり合えば
灰色になれるよと
そしたら黒は言うんだ
そんなことをすれば君を汚してしまうよ
白は 笑って 言うよ
汚れるなんて言わないでって
君は確かに ほかのどんな色より
暗くて ほかの色と混ざり合っても
明るい色にはなれないけれど
僕となら相性がいい
唯一ほかの色になれるんだ
だからひとりがいいなんて言わないで
ひとつになろう
使い古された絵筆がつぶやくんだ
僕は もうすぐで捨てられてしまうよと
でもね 今まで役に立ってきたじゃないか
気にすることはない
みんな同じ定めさ
最後の仕事は素敵な絵を描きたいな
たとえばきれいな空を 描きたいな
真っ白な画用紙に大きな夕焼け空と
いつもの街並み 誰かの笑顔
幸せな風景画を描けたらいいな
毛羽立って広がった古びた絵筆で
素敵な絵を描こう 心のキャンバスに
人々の暮らしが見えるそんな絵を描こう
いろんな色たちが寄り添って
混ざり合ってひとつの絵の中でずっと生きてゆくんだ
永遠ならここにあるんだ ほら君も
命を宿した 呼吸する色彩
いつか終わる 定めを抱いて生きてる
だからこそその色は鮮やかに世界を染める。