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どるとるの部屋


[547] 優しいピエロ
詩人:どるとる [投票][編集]


泣いてばかりの弱虫ピエロ
今日も朝から晩まで泣きはらしていた
サーカスはそんなことを後目に今日も大盛況
お客さんで満杯
でもピエロはただ笑うだけ
笑うだけが仕事なのにそれが苦手なピエロだからいつも団長に叱られては泣いてる

それでもピエロは優しいからみんなにはとても人気者さ
君は優しいだけが取り柄のピエロ
みんなにはそのままでいいと言われているけれどピエロはピエロでなんだか複雑な気持ちだった

笑顔を浮かべても
作り笑いならば
お客さんに申し訳ない気がして
それを望まれてもなんだか自分的に悲しくてさ

ピエロのくせにお人好しで妙な勘ぐりをもつ
笑うことより泣くことが仕事のようなピエロは今日もサーカス小屋の中でひとり朝まで笑う練習

だけれどあまりに笑えないピエロに団長は呆れて言いました
君はもう笑わなくていいよ、泣いていなさいと
そしていつしかピエロはぎこちない笑いから素晴らしい泣き顔見せながら
曲芸をするようになりました
街中で人気のサーカス小屋は泣き虫ピエロを見るために何人ものお客さんが舞い込みました
そしてピエロは思ったのです
世の中作り笑いするだけが人生じゃない
悲しかったら泣くことも人生なんだとはじめて心から笑った
優しいピエロはみんなの人気者
みんなと肩を抱き寄せあいながらいつしかサーカスのまとめ役になりました
人の痛みがわかる優しい泣き虫ピエロ
今日もステージの上
見事なまでの涙で綱渡り 空中ブランコ 玉乗り
たくさんの曲芸を見せながらいつしか浮かべられていた笑顔でお客さんにお辞儀をした
ようこそ サーカスへ
僕はもう泣き虫じゃない
優しさはそのままだけれど
またおいでませ、サーカスへ
ピエロは高らかに笑った。

2009/11/21 (Sat)

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