詩人:どるとる | [投票][編集] |
君の背中はもう僕が知っている
頼りない猫背の背中じゃなかった
今日君は 旅立つんだね 東京の街へ
やりたいことがあると笑っていた
たまには連絡を寄越せ
嫌になったら帰ってこいよという声が ベルにかき消された
旅立ちの日の朝は小雪日和 赤目の雪ウサギ
ミカンの木 軒下の猫 始発電車 金色の夜明け
すべて 僕の大切な宝物
ああ この街には 思い出がありすぎる
ああ なくすには惜しいものばかりだなあ
押し花みたいにいつまでも 形に残せる思い出ならばいいのに
空は どこか寂しげに 薄曇りだよ
待ちわびたように手を擦りあわせた
星のない夜もある どんなにきれいな空も
見えているものだけでは 何もわからない
遠ざかるふるさとの街 車窓に映る 田畑と 思い出の数だけ降る 涙の雪
ポケットにしまった君がくれた手紙
ああ なぜだろう今さら愛しくてたまらない
ああ またひとつ僕は涙を知って強くなる
「大人になること」に急ぎすぎてた
背伸びばかりして 大人が何かも知らないくせして
ただ駆け足で いくつもの季節を
いたずらに 通り過ぎていたよ
思い出す 恥ずかしいくらいに
あの頃の僕は 互いに幼かったね
旅立ちの日の朝は小雪日和 赤目の雪ウサギ
ミカンの木 軒下の猫 始発電車 金色の夜明け
すべて 僕の大切な宝物
ああ この街には 思い出がありすぎる
ああ なくすには惜しいものばかりだなあ
なくしてはじめて気づくことがある
気づいた痛みに意味があるならば
それは今の僕の中にもあるだろうか
またひとつ今年も 年をとる
そろそろ雪が降りだしそうな空模様。