ホーム > 詩人の部屋 > どるとるの部屋 > 祭りのあと

どるとるの部屋


[7493] 祭りのあと
詩人:どるとる [投票][編集]


線香花火のように 落ちた瞬間の美しさ

バケツの中で泳いでる金魚が跳ねた夏

神社の境内に続く長い階段かけ上った

君の丸みを帯びた背中が 遠くなっていく

すぐそこにいるのにあれ可笑しいな

決められたあらすじをいつの間にかそれていた

追いかけなきゃ流れてく涙のあとを

祭りも終わりかけて片付け始めた頃に

君に渡したとっておきのラブレター

君はうれしそうに笑って言ったよね

「ありがとう」
その言葉だけで 僕はお腹いっぱいになったよ

不具合な約束の せいでひとつ乗り過ごした電車

田舎だから 次の電車が来るまで時間があるんだ

炎天下の中で 陽射しが突き刺すように降る

僕は小説家なんかだろうか
やけに 行間を気にする

空いてしまった間をどう埋めようか
そればかりに気をとられてた

誰もが納得する模範回答をください

ひどくぐらついたイメージのままで

打ち明けた思いは青い果実のようだ

とても食べられたもんじゃないけど

「あなたらしいね」って
嫌がるでもなく優しく 受け取ってくれたのを覚えてる

切れた鼻緒を 結び直すように
ほどけたなら何度でも
結んでいこう 下手くそでも
何マイルかは 歩けるだろう
そうやって 少しずつ 距離を伸ばしていくんだよ

祭りも終わりかけて片付け始めた頃に

君に渡したとっておきのラブレター

君はうれしそうに笑って言ったよね

「ありがとう」
その言葉だけで 僕はお腹いっぱいになったよ。

2016/03/18 (Fri)

前頁] [どるとるの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -