詩人:どるとる | [投票][編集] |
涙に沈んだ街に 夜が降りて来て
帰り仕度をすましたらいつもの電車に揺られ
窓の外を 流れる月と並走するように歩幅を合わせながら
つり革に掴まるのもやっとの疲れはてた体を 引き摺るように運んでく
笑いながら 泣きながらたまには
照れ臭そうに頬を赤らめながら
いつもなら ただ難なく過ぎるだけの
夜を今だけは遠く 見送っている
夢をみている街に 光が 散らばって
暗がりを照らす 猫が跳び跳ねて ダンスの練習してる
これといって 自慢できることもなく 話せるようなニュースもない
今日もまた おざなりの一日 仕事のあとの一杯のビールが唯一の楽しみ
愛されたい 愛したい 世界で誰より
まだ知らない 気持ちを 手にしたいんだ
出会いそして別れてく その時の笑顔や涙
刻んだ思い出 大事そうに明日に持ってく
誰もいないホームに
まだ少し 冷たい風が吹く
ほとんど散ってしまった桜の花びらが
風にさらわれ宛もなく どこかにまた舞い上がっていったのを見た
笑いながら 泣きながらたまには
照れ臭そうに頬を赤らめながら
いつもなら ただ難なく過ぎるだけの
夜を今だけは遠く 見送っている
この世界にある 悲しみを笑い飛ばす
そんな覚悟もない だけど笑いたい
せめてそばにいる大切な人たちの
笑顔を守りたい そんなことを考えながら
夜は 過ぎてく 夜を泳ぐ月はもう頭の上
ひとあし先に 朝に旅立っていった。