詩人:けむり | [投票][編集] |
聞こえますか? けっして飽和することのない時の流れが
存在に痛みを与えるけれど 呼ぶ声が ほら あなたを…
火の灯った蝋燭のように刻々と燃え散る喜びと
雪のように降り積もる悲しみのヘドロがあなたにませた行為を強いるけれど…
あなたは大勢の中心で誇らしげにグラスを飲み干しながら
ふと目を向ければうつろな顔で幼少時代に帰っている
濃い煙草をたやすく呑んだかと思えば
ゆるやかにはく煙にため息を隠しているだろう
けれどもあなたは悲しいことに 忘れてしまっている
子供がまったくの純粋ではないということを
あなたはただ幼いまま大人の社交術を身につけたにすぎない
あなたは行くべきです 若いパントマイマー
ここにあなたを満たすものはなにもないから
聞こえる先がなるべく遠くにある内に ほら あなたは
ろくでもない芸を褒めそやす数々の声のすき間から まだ
今は栄光の引き縄をつかんでいるから
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幸せが ありふれたものならば 嬉しい
足りないよ 優しさが
ああ でもそれは ぼくこそだ
世の中のことじゃない
もっと 温かくなりたくて ぼくは
自分のいたらなさを許せない
それははた迷惑なきびしさだね
例えば あの子の傷を癒してあげたくて
例えば あの子の涙をぬぐってあげたくて
例えば あの子の罪を許してあげたくて
偽善者! なにを望みますか?
本音でも? ええ 静かな日々を
誰にも干渉されず傷つけられない日々を
だって…聞いてくれますか? ええ 弱くて
ぼくはみじめなほど弱くて 駄目な奴で
独りよがりで そのくせ寂しさに耐える強さもなくて
だから? 聞いてくれますか? ええ
だからせめて人の役に立って褒められたいんだ
褒められると 嬉しいから そして?
そして ぼくは自分自身を確立させたいんだよ
ぼくはぼくがぼくとして存在出来る世界でみんなが幸せならいいと思う
でも それは 自分勝手だってわかっている
だから? だから せめて祈ることしかできない…
みんなが幸せになれたらいいのにって
無理なのに? 無理だけど…
それを悲しいと思うぼくも やっぱり ぼくで
だから? だからせめて祈ることだけが 精一杯の優しさなんだ
それでは駄目なの?
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阿佐ヶ谷が燃えている 燃えているんだぜ
中央線で 十分のぼって 新宿の雑踏に埋もれてる場合じゃない!
駅前なんてずっと水没してりゃいい
じゃぶじゃぶ踊ってシャウトするぜ
でたらめの絶叫でモヤモヤを吹っ飛ばすんだぜ
濡れるのが嫌だなんて部屋でうずくまってる場合じゃない!
阿佐ヶ谷は燃えている 燃えているんだぜ
嵐! 嵐! 嵐!
吠えろ 踊り狂って吠えるんだぜ
おれは情熱するんだ
おれは情熱しちゃうんだぜ
うらやましいんだぜ
畜生! 畜生!
無口で真面目だなんて 都合良く褒められて
そんなことで喜んでいる場合なんかじゃあ全然ないんだ
畜生!
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自分らしさと
理想の自分の
妥協点を探しながら
空を見ていた
色彩と 透明度と 流れていく雲の形を
ブランコをこぎながら
あいつを傷つけてしまった
猫がじゃれるように
悪意もなく
ちっぽけな
板の上で
周りの空気をかき回していた
ただのぼくが
夢と現実を
行ったり来たり
しながら
明日と
昨日の
すき間を
鼻歌で埋めて
手を離せば届きそうな空を
見ていた
ブランコをこぎながら
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ノック! トントン 「どなた?」
散歩は嫌い?
「今日の天気は?」
そうね 多分、晴れかしら
晴れと言っても問題ないわ
「Sorry 太陽は 苦手だよ」
あら でも 好都合だわ
中で ゆっくり お話しできる
「ごめんよ ドアは 開けないよ」
いいえ 開けるわ
だって あなた 寂しがり屋だもの
「だから開けない」
弱虫ね
嫌われるのが 怖いのね
「同情される よりはマシかな」
ノック! トントン 「開けないよ」
「開けないったら開けないよ」
「空気が 漏れると 毒が散らばる」
可哀想 あなた 優しすぎるのね
ノック! トントン 「…」
ノック! 「…」
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泣かないで
おいで もうずっと離れないで
君を連れ去ってしまいたい
行けるところまで行く速度に乗せて
君を奪ってしまいたい
情熱と活気に満ちたZoneに
手をにぎり返しておくれよ
もっと強く繋がりたい
おいでウェンディ
喪失感は一瞬さ
ぼく達は加速する
怠惰も欲求不満も振り切る速度まで
感じて
到達した瞬間の開放感を
泣かないで
独りではないから
笑っておくれ
ぼく達はもっと濃密な二人ぼっちになれるから
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その時々の感情が
例外なく
薄くなって消えていく…
それにつれて
ぼくが失われていくみたいなんだ
ちぎれて
過去のものになる…
ああ待って
それもぼくだ
あれもぼくだ
拾い集める時間をちょうだい
生まれたての赤ん坊は完成されたパズルだ
そんな気がして
今のぼくはぼくとして欠落していると
不安になる
昨日のぼくを受け止められないまま
明日が来るのが怖い
人と触れ合うと
その人の中にぼくのイメージが残る
そのぼくは
ぼくのものであって
その人のものなんかじゃないんだ
ぼくを返して
ああ痛い
失うことが人生か
失うことが人生か
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青いスニーカーでスキップを踏む
いつの間にか駆け出した
虹が映る水たまりを飛び越える
まだ大人じゃない
黙っていられない
もう子供じゃない
まだ遊び足りない
ニュースに感情移入できるようになった
涙もろくなった
ビデオレンタル店の常連になった
生活は時間のレンタルみたいだと思うようになった
知り合いが増えた
なかよしが減った
必要なことをする
無意味さを恥じる
走りたくて走った
息苦しくても止まりたくなかった
どこまでと決めずに続けたかった
帰り道のことを考えたくなかった
空はいつか見たものに近づきつつあった
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なぜ生きなければならないかと考える時
けっして見失ってはいけないことは
美しさをどこまで理解出来る自分なのかということ
審美眼を磨かなければ腐っていく 心が
求めるべきものを求めている 空を
見上げてほうける 風の中に秒針が聞こえる
目をつむるとなにも見えない
わたくしは寂しいものなのです
ハッと息をひそめる空白
それをすらわたくしは恐れます
なぜならその刹那
理解を超えた事象に翻弄されているから
万事を瞬時に受け止め
その美と醜をより分ける
そのような賢さを望み
幼さに決別をせがむ
その時わたくしは過去の遺物となり
果てのない無知の漂流者になる
なぜなら生とは発見という喜びにのみ
渇望を癒されるから
わたくしは愚かなあまり肥大する
居心地のよい部屋で安穏とする
ゆえに対人のはしばしで傲慢を隠しきれない
わたくしはそのおごりを恥じる
けれど隠すばんそうこうをいく種か持っている
そのいらだちの不便利さに
明日への畏怖を感じ続けなければならない
わたくしは可能性に縛られている
命のかせなのか
わたくしは明日と昨日を分断出来ない
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悲しいことが苦手なの…
なにを信じればいい?
アルコールと騒いでも熱くなれなくて
せめて抱きしめて
凍りつかせるようなことばかり
明日会えないかもしれないから
今せめて…
知ることで
経験することで
強くなれるハズなのに
いつもたそがれは
胸をこらしめて…
静けさの中で忘却を追いかけながら
君のぬくもりに振り返らされる
迷うようにたたずんで
追いつく君に引き戻される
君がいなければ
なにを失うことにも恐れない
笑うことで好かれるよりも
無表情で距離を守る
孤独のおだやかさにいざなわれて
寂しさに対しての鈍感さを学び得た
静かな平和に酔っていた
君に会うまでは
君が世界をほてらせる
せめて抱きしめて
夢の中で会えないかもしれない
いつもそばにはいられないから
今せめて…