砂塵巻き上げた後で緩やかに笑う傷痕を隠せば二つ 染み入る涙の螺旋状戻れはしない旅路告げ 戦地に赴く箱の中思い出しては告げる 母の顔片道切符の夢飛行 涙に滲んで笑えない勇んで飛び入る夏の虫夕刻の高揚 口にはすれど思い出すのは 父の顔重なる夕陽に 笑えない紙、風吹きて舞い上がる 燃えて墜ちるは一滴狂い狂いに空を這う 片道切符の走馬灯この場所の 空を愛した 海を愛した 山を愛した 里を愛した人を愛したただそれだけのことただ それだけのこと
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