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タンバリンの部屋  〜 投稿順表示 〜


[41] ショーンおじさん
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ほら、もうすぐ潮が満ちるよ。



後片付けの日が来るんだ。



だから早く仕度をして、


その小屋から出ておいで。





僕の小屋には、もうすぐ波がやって来る。誰の小屋にも来るけど、時期って決まってないから。


一週間で来たり、何年も来なかったりするんだ。気付かなかったり、大きすぎることもある。


ショーンおじさんは片腕がない。ずっと昔の「後片付けの日」に、小屋を離れなかったから。


潮が満ちたのには気付いてた。だけれど、用事がある気がしたんだ。



小屋を守ろうとしても駄目なんだって。いつもきっかけが、自分自身にあるから。




咲いたばかりのタンポポが



もう、飛び立つ準備をしてる。



満ちた岸辺が、



一度に浜辺に変わっていく。




なんだかざわざわしてきたね。こんどの波は、大きそうだね。



チャッピー、右手を噛まないで。僕はずっとここにいる。



おじさんはきっとね、体を失ったんだよ。

2006/08/14 (Mon)

[42] 殺虫剤、キャットフードカステラ
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「ねぇダーリン。人はもう、


人間はもう美しくないんだって。


あの男の人が言ってたの。」



もう、美しい筈がないんだって。


泥まみれの野良猫の方が、どんなにか美しいって。


だから私、ひっぱたいたの。



そしたら涙が出てきたわ。



しょうがないのこんな風に。



生まれて来たの間違ってなんかないわ。




そうでしょう。ダーリン。



2006/05/03 (Wed)

[43] なんだっけ
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なんだか通り越してしまったような


後戻る気がして悔しいだけのような



不味い氷を噛みながら


僕は今ジッパーを下ろしている



サバンナはとても、乾いているんだって



なんだっけか。あの月のなまえは


なんだっけか。幼稚園の頃のあだ名




当然不味い、水なのか。


2006/06/29 (Thu)

[44] ニコレットを噛む前に
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みたらし団子で殴れば

シュークリームが飛んでくる


そんな甘い、季節の奥には


信念があって。

愛とかそういう言葉にならない


信念が、あって。


サバシティカルなカンカクは、


そう、ミルクがコーヒーに溶け込んでいく。


それを見つめていればいい、それだけのカンカク。



無くなってしまった、なんて。


誰が言うのさ


欲しい怒鳴り声



泣いてるじゃねえか
    誰が泣かした。



簡単過ぎる事、


それはとってもむずかしいこと。



自分の事、棚に上げるだとか


言ってる事、矛盾してるだとか



そんな会話の通じない場所で、



ヤンキーが叫んだ。




見習えチョイ悪オヤジ

2006/07/03 (Mon)

[45] 人殺しの四日間
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もう四十回も四日前


  南京錠、錆びて茶色のドア


駆け出す様にトビラを閉めた


  悲鳴はその度に聴こえた



割れた半月、ガラステーブル


  噛じり飽きたレモン捨ててきた




「行かないで、行かないでよ!」って、


  お前はすぐ笑い話にするけれど


  こんな事まで茶化すなよ




乾いたレモンの散り際の


  香りで僕は思い出す



「行かないで、行かないでよ!」って、



二、三個コオリが溶けた時


  自分の声だと知ったんだ


2006/08/03 (Thu)

[46] 雨の日ブーツ
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もう随分雨は降ってて
商店街 僕は一人歩き
ジーンズの色が、雨色に染まってる



時々、人生に見えるんだ。
庇の下や、丸い葉っぱの木の中で
一休みしたら、また濡れに行く




煙草は恋人、くちづけしなきゃ
すぐに消えちゃう、灰を残して。



緑色の傘は、錆びていたから、バスに乗る時投げ捨てたよ。
バスに乗る時投げ捨てたんだ。

錆びていたから
灰を残して
消えていくんだ
灰を残して


2006/08/12 (Sat)

[47] 僕が子供じみている間に
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誰も乗っていない

       桟橋にある







アヒルのボートで二人きり

  バシャバシャと僕らは暮らしてた



「ほとりがあるよ


「ううん、あれも海なの




アヒルのボートは笑ってる

  ポケットの中身、一緒の袋に入れて



「縄、はずしちゃったね


「いいの、二人で安心になるから




水には、しょっぱいのと普通のがあった


僕らはボートの中でそれを知った





さざ波が立つと 僕らは抱き合ってささえた





でも、ある時


抱き合った向こう側


お互いに  ボートの床にヒビを見つけた




アヒルのボートは同じ顔


  二人とも、その事を隠して





アヒルのボートは笑ってる


  無邪気に傷付け合った跡




あいあいがさ お菓子の袋




最初に君だけ残って


      その三日後僕だけ残った




「霧が晴れたらね、後片付けの日がくるの



「私ね、それが怖いの   なにより怖いの




みんな




みんな、




水色ドアに閉まっておかなくちゃ、


      僕が子供じみている間に。





アヒルのボート



バシャバシャと幸せそうに




「行きたい場所なんて、どこにもないんだよ





2006/08/13 (Sun)

[48] アイスクリームは身勝手
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ドラッグストアで買い物してる


君は「ドラッグストアって響きが好き」と、薬箱みたいなカゴ下げて笑う



棚卸ししてるのは、おじさんみたいに老けた兄ちゃん


ジーンズのほどけた糸に、ズルズルと若さぶら下げてる



アイスクリームの箱ひっくり返して店中、クリームまみれバニラの香り



そうしたいって思うのはお菓子売り場に居るあの子と僕だけみたい


でもそれって、しょうがない事なんだ



どっちの方が身勝手な人間か、なんて



誰に聞く言葉じゃないだろう


2006/11/14 (Tue)

[49] コンドルギアの粉塵とケムリの話
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アベルスネイアの世界で、ヤリ投げってた


僕は気ままで、夜は気まぐれ。



要はどう生きるかって事


忘れかけてるのなら、


忘れかけてるんだろう。




錆びちゃイケナイよ、だめなんだ


いちごジャムをかけようよ。



型取るなんて、逆の事柄


よごし切って、窓に目をやる


ぼんやりとしてきた



違ってきたね、どこか今まで。


出掛ける準備、君も気まぐれ。




袋詰めのキャンディが


何度もクルマに轢かれる様に


そこからさきはもう全部、


君の秘密になるんだろう。



2007/02/09 (Fri)

[50] 旅のかばん
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夢の切り口を見たんです


まぎれもなくそれを


淡い桃の縁取りは


昨夜の夢ではないのです



僕の仕度を邪魔する人が、いなくなりました


邪魔しあっているのが、生きている事でした



この荷造りを終えたら、頭の固い人たちの仲間入りをするというのに



どうして どうして


だれも僕を止めないの



旅のかばんをさかさにしてください



さかさにして欲しいんだ



2007/04/08 (Sun)
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