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波瑠樹の部屋  〜 投稿順表示 〜


[2] 文学青年の初恋
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明けても暮れても
彼の左手には本がある。

親指でページをめくり
小指で押さえる

右手は時折
眼鏡を押し上げたり

無造作に伸びた前髪を
払う役目を担う。



自販機でミネラルウォーターを買い、

通学路に面した公園の
いつものベンチに腰掛ける。
彼の日課だ。


しおりに手をかけ
ページを開こうとしたその時、
頭上から少女の声が降りた。



目線を少し上げると
赤茶けた栗色の
少し癖のある髪がある


彼は、数えきれない程の
膨大な言葉を知っている

知っているはずだった。


少女の澄んだ好意は
彼の心を
まるで幼子の様に
純真に戻し、震わせた‥


少女はとても美しく
彼にはもはや
言葉の引き出しは開かず、ただ少女を見上げるしかない


少女は柔らかく悪戯に
彼に微笑んだ。

彼もわずかに微笑み返す。




ほのかに熱く上気した頬が、
これが恋の始まりだと
感じさせていた‥。



2012/02/12 (Sun)

[3] 初夏を連れた君
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待ち合わせの喫茶店。

君のお気に入りのスウィングジャズが流れる‥

入り口横と店内奥に
小さな店には不釣り合いな程の
大きなスピーカーが
直置きしてある

リズムを刻む重低音が
足元からお腹の辺りに
響いてくる感じが、心地いいと‥
君は酔いしれる様に
満足気に目を閉じる。


店内は少し暖房がきつく
うっかりホットコーヒーを頼んだ僕は
タートルの首もとに
じんわり汗が絡み付く‥


君は年中アイスティーしか飲まない。

ストローで氷をカラコロと弄ぶ姿は、
とても涼しげな初夏の
風鈴の音を思わせる。


どうやら君は、
いつでも自分の傍へ
好きな季節を招き入れる
才能があるみたいだ‥




お茶を飲み干すと
今度は映画が見たいと言い
足早に店を出る。


のぼせる様な暑さから
一気に真冬の冷たさへと
連れ戻される

ポケットに手を入れ
少し前屈みに歩き出す僕の腕に、
君はスルリと腕を巻き付けながら
「寒いね」と北風に肩をすくめ笑う。


しかし
その言葉とは裏腹に
君から伝わってくる笑顔の香りは

さっきと同じ、
清涼感に満ちた初夏の熱を持ち
美しく眩しく僕の身体中を
吹き抜けていた‥。

2011/02/07 (Mon)

[6] 二月に吹く春風
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冬の隙間を

掻いくぐって

不意に吹き抜ける

暖かな風は


まるで

君がこの心に

置き忘れていった

優しさのようで


僕の視界は

少し潤んで、滲んだよ‥




今でも

愛していると‥


2011/02/11 (Fri)

[7] 君の心の水彩画
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君が僕を

描いてくれるというなら


油絵じゃなく

水彩画がいいな


凸凹した油絵じゃ‥

今の僕の姿は

酷く哀しげに

見えるだろう?


淡く優しい色合いで

サラサラと僕を

描いておくれよ‥


美しい君の

柔らかな心の筆で‥




2011/02/11 (Fri)

[8] ちらちらと
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ちらちらと

街灯の下

舞う雪に


寄り添い消えゆく

恋の儚さ




AIKU110213


2011/02/12 (Sat)

[9] 君に届け
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君は星になったらしい‥




僕は

君に伝えたかった言葉
君に届けたかった想いを

真空パックの袋に
詰め込んだ


呟いて 囁いて 叫んで‥

ひとかけらも残さず
詰め込んで

隙間なく封をした。


いつか
宇宙飛行士に会えたら
託すんだ


ロケットに乗せて、
僕の真空した声を

君という名の星まで
連れてってもらおう




きっと‥届くよね‥
きっと‥きっと‥


きっと、届くさ!




2011/02/12 (Sat)

[10] 桜と君の頬
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賑わう街の中心地から
少し外れた場所にある、
一件の雑貨屋。


今日は暖かいから
歩いて探索しよう、と
君が言い出して

わざと細い裏路地を
二人歩いている途中、
僕が先に見付けたのだ。


僕は本来あまり
こういった小物には
関心がなかったが、

嬉しそうにその店に
駆けていく君の後ろ姿が
妙に可愛くて

思わず僕も笑顔で
店内に入る。


店内はアットホームな
雰囲気で溢れ
手書きのポップや
手作り感のあるショーケースに、

お行儀よく、所狭しと
雑貨達が並んでいる。


どれもが、手に取ると
暖かくふっくらとした
オーラを放つ‥


ふと君を見ると
小さな桜のモチーフが付いたかんざしが
気に入ったようで、

鏡の前で
何度も髪にあてながら
満足気に笑顔でポーズを
取っていた


僕は
君への初めてのプレゼントをそのかんざしに決め、

会計を済ませた後
店員の人に頼んで、
その場で君に付けてもらった。

そうして店を後にした。




店を出てからも君は
何度もかんざしに触れては
心底嬉しそうに
僕に笑いかけてくる


こんな笑顔が見れるなら
探索した甲斐があったな‥と、

彼女の頬に軽く触れた後
その手を取り
幸せな気持ちで歩き出した‥


ほんのりと染まった
彼女の頬は、
髪にさした桜色に似て


柔らかな春の訪れが
間近である事を

風の匂いと共に
僕に感じさせていた‥。



2011/02/12 (Sat)

[11] 君へと溢れる僕
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僕は雨に問う

あの子は今、
泣いているの‥?


僕は陽だまりに問う

あの子の傍に
温もりはある‥?




僕は風に乗せる

愛しきこの想いよ、
あの子の胸に

どうか、広がれ…!



2011/02/23 (Wed)

[12] 旅立ちの空の青
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小さな胸ポケットには
一握りの涙

君が僕の為に流した
春色の優しい結晶


今夜は一段と星が
綺麗だから、

あの星も一つ
連れて行こう。




もうすぐ今夜の
最終列車が来るよ

汽笛の音が
夜の闇を駆け上がる




泣いた後に笑う君

抱き締めようとして
堪えた両手

震えてるんだよ‥




さぁ、行かなくちゃ

夜明けに向かって
行かなくちゃ…


君が願ってくれるから

僕の明日は
きっと快晴さ




僕の旅立ちは

どこまでも青く澄んで
眩しく輝くのさ

眩しく広がるのさ…!



2012/02/06 (Mon)

[14] 君と雨と白い傘
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雨の日にはいつも
君の白い傘の花が咲く


僕は、この部屋のこの窓から
雨の日を待ち侘びてる


雨の日の君は
一段と綺麗に笑うんだ

白い花をクルリと回し
跳ねる雫と踊ってる


僕は、この部屋のこの窓から
雨の日の君に

恋をしたんだ‥。



2011/04/25 (Mon)
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