詩人:波瑠樹 | [投票][編集] |
移り変わる季節の匂い
日ごと夕闇が急ぎ足で
夜を迎えに来る…
秋から冬への陽の光は淡く
空の高さは
想いを遠ざけて行く…
長い長い夜の静けさは
心を穏やかにすると同時に
僕という存在を
まるで簡単にその闇に飲み込む…
僕は笑い方を忘れた
僕は歩き方を忘れた
僕は
僕は
深い眠りから
覚めない様な錯覚を知った。
それでも僕は
もがき苦しみ、苦笑いを浮かべ
何かを全てを
変えたいんだ。
夜明けの少し前、
夜から朝へと
茜色に空が移りゆくその様が
それでもやはり
美しいと感じて
しまうんだ…。
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僕は、探している
何を?かなんて分からないさ
あの日街中で、不意に聴こえた
懐かしい歌…
あぁ…
忘れようとして
焼き付いた歌だ
何故だ 心臓をえぐられる様な
切なさと悲しみに
膝が崩れ、肩が震え
涙が溢れた…
拭っても拭っても零れ落ちる
人間の涙だ
ありふれた毎日の繰り返しを
僕は空っぽのまま
ただ生きている
僕は、ただ生きている
僕の感情は虚無だ…
けれど、時折
呆れるほどの人間臭さが
僕を駆り立てる
僕は矛盾している
生と死を同時に求めるは
限りなく
矛盾しているのだ…。
あるいは
それらは表裏一体
なのだろう。
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自分らしく
あることは
とても孤独だ
生きてきた環境の違い
言葉の違い
経験や価値観の違い
様々な違いの中で
人は
差別ではなく
区別をされる
そんな世の中だ
自分らしく
あろうとする時
確実に
周りとの違いに
区別され
打ちひしがれる
自分らしく
あることは
その孤独に耐える
覚悟が
必要なのだ。
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過ぎ去りし
駆け抜けた日々は
群青の輝きの中
淡いフレーズに
君が震わせた
涙の笑顔
遥か遠い空の下
元気でいるか?と
尋ねる様に
うたい放った
また
会いたい
また
笑い語ろう
いつかまた…
君と僕のうた
幼げで甘いうた
もう少し
大人になれたら
歌いたいんだ
あの日々を
照れ笑いで
キスをしながら
君と僕が絡めた
あのうたを
遥か遠い空の下
君と僕のうたが
ずっと
響き渡る様に…
いつか僕らが
再びどこかで
出会える様に…。
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虹待ち、見上げる曇天の空
過ぎ去りし日の想い出は
懐かしさと痛みを連れて…
我を忘れて転げ落ちた
昼下がりの河べりの草の匂い
何かを振り切る様に
何かを見出だす様に
身体を仰向けに横たえ、
大の字で天を仰いだ…
そして生まれ変わる決意を抱く…
知らない町の空の下
知らない僕が背中を押した…
虹待ち、雲の切れ間
射し入る光は
初めて見る眩しさだった…
ここから生きる僕が
満面の笑顔で泣いていた…。
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僕と彼女の積み木遊びは
一風変わっていて、
そこにはルールがある
積み木を積むのは、彼女一人の役割
完成するまで僕は手を出せない
彼女は喜怒哀楽の様々な積み木を
巧みに積み上げ、
一番頂上には「愛」の飾りを乗せる
完成したそれを見る度、
どこかクリスマスツリーに似ていると
僕は常々感じていた…
彼女が満足気に完成させたそれを
一気に壊すのが僕の役割だ
一番上の愛を払い、
両手で抱き締める様にして崩す
ガラガラガラガラと激しい音を立て
四方八方に欠片が転がって止まる…
彼女は、
その欠片を眺めるのが好きらしい
僕に壊されるのが好きらしい
だが、最後の積み木遊びは違った
彼女は積み終わった瞬間
自らの手で壊したのだ
「愛」さえ乗せる事なく
完成させた最後のそれを
激しく、叩きつける様にして
壊したのだ…
積み木遊びはもうお終い
そう言って笑いながら、
彼女は去って行った…
最後に乗せなかった「愛」を
僕の手にそっと握らせ、
彼女は去って行った…。
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その朝、天候はあいにくの雨だった…
彼女は、重い気持ちで空港へと向かった。
学生時代からの「親友」が、転勤先の東京で結婚するという報せをよこしてきたのだ。
「親友」の結婚という出来事は、彼女にとって大きな区切りとなるものだった
なぜなら彼女は、長年ずっと「彼」に想いを寄せていたからだ…
搭乗手続きを済ませ、機内へと乗り込む頃には
雨足は更に強まっていた
行き場のない切なさを感じながら、窓に叩きつける雨を眺め
離陸の時を待った…
機体が滑走路へと入り、エンジン音を高める
一気に加速する圧力に、僅かな緊張を覚えたが
次の瞬間、それは清々しい躍動感へと変わった…
ふわっと浮いたかと思うと、どんどん高度を上げていく
あっという間に雨雲の中へと入り、窓の外は霧中の様に白く遮られた
さっきまで叩きつけていた雨も、下方へと遠ざかり
彼女の胸は、この先の光景へと抱く期待で溢れていた…
数分後、雨雲を突き抜けた機体は、眩しい太陽の光に照らされた…
まるで雪原を走るかの様に、真っ白な雲の絨毯の上を駆ける…
太陽は一回り大きく見え、窓から射し込む光は
熱さを感じる程だった
遥か彼方には、水平線の様な青空が横に美しいラインを引いていた…
なんて綺麗なんだろう…と、その光景に目を細めながら
心を支配していた何かが、解放され遠ざかっていくのを彼女は感じていた…
約一時間の後、機体は着陸体制へと入り、
高度を下げながら、また雨雲の霧へと包まれていく…
そして再び、窓の外には激しい雨が戻っていたが
彼女は、不思議と穏やかな気持ちでその雨を見つめていた…。
羽田に着き、到着ロビーに出ると
明日に式を控えた「彼」が迎えに来ていた
屈託のない笑顔が、ほんの一瞬彼女の胸を痛めたが
それもすぐに笑顔に変える事が出来た…
久しぶりに見た「親友」の笑顔は、守るべき愛を見付けた充実感と幸せに溢れ
それは、ついさっき見たばかりの雲の上の太陽の眩しさに似ていた
彼女はずっと言えずにいた祝福の言葉を、ようやく彼に伝えると
心からの握手を交わした
空港の外は相変わらずの雨だったが、二人が見せたそれぞれの笑顔は
その先に生まれる虹の様に煌めいていた…。
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音もなく
雪溶け水は流れ落ち、
僕の元へと訪れる君が
春を知らせる事だろう…
田園脇を駆ける風の歌…
それに応えるかの様な
制服達の笑い声…
僕と君が出逢い
そして巣立った、
あの古びた校舎を思い出す…
冬の終わりの君と僕、
永く刻んだ時を抱き
柔らかな陽を浴びて…
新しい二人を迎え結びゆく…。