足下に転がるスチール缶を何も考えずに両方の足先で突っつき合う。それは昼下がりのバス停のベンチでバスを待つ訳でも君が降りてくるのでもなく、ただ座っていただけ。君が僕の目を見て笑う『まるで死んだ魚のようだ』と。確かに間違いじゃないと思うよ。でもそんな君の目も僕と変わりはない。雲一つない灰色すり傷だらけの空き缶まだ僕が存在する理由が見当たらない。
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