詩人:チェシャ猫 | [投票][編集] |
祈っているよ
色彩も薫りも失せた花弁が
忘れられた並行世界に音無く散在したとしても・・・・・・
隙在らば引き擦り込もうと手招く
表層だけが色付いた輪郭の曖昧な誘惑
手にして舌を這わせその味を確かめてみても
無機質な刺激が僕を狂わせる
溢れ出そうとする感情と感傷に理性で蓋をして
崩れ出そうとする世界の秩序を保っていた
言葉一つで選べた筈の
手を伸ばせば貴方をなぞれる並行世界
繰り返しこの身をなじっても変わらぬ今と
二度と交わることは叶わぬ失った世界の面影に溺れ
響かぬ声でその名を呼び続けている
願っているよ
色彩も薫りも失せた花弁が
貴方の微笑う並行世界に届かぬように
祈っているよ
涙と後悔で彩られた花弁が
忘れられた並行世界に音無く散在したとしても
微笑っているよ
色彩と薫りに飾られた貴方の居る世界が
僕と歩む並行世界よりも美しく在るようにと・・・・・・
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忘れられない人と忘れたい自分
その2つを天秤にかけてみても
比べられないから僕は旅に出た
薄刃の三日月が微笑う長い夜
黒猫の尻尾を目印に
戸惑う指を5本ずつ
絡めて作った結び目が
解けぬようにと紡いだ言葉
忘れないでと言った君
忘れないよと言った僕
途切れて消えた足跡を
時計の針が見届けた
忘れないでと願う僕
忘れたいのと笑う君
微笑った二人の面影が
剥がれて散って星になり
白い鯨の夢を見る
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夏の夜に一人きり
弱虫羊が夢を見た
星影浴びて軽やかに
貴方と踊る夢を見た
二つ並べた枕に残る
頭の形の窪みは一つ
右手に触れたグラスに残る
琥珀の色した寂しさ一口
飲み干し目を閉じ眠りに就いた
夏の夜空に一つだけ
弱虫羊は祈りを投げた
月影辿って行き着く先で
貴方と微笑う夢を見た
弱虫羊が見た夢は
弱虫羊が愛した人は
弱虫羊が手を振った
弱虫羊の願いは一つ
夜の眠りを一人きり
弱虫羊は抱きしめた
星影浴びて微笑って言った
言えなかったさよならを
弱虫羊は夢を見た
貴方と踊る夢を見た