詩人:チェシャ猫 | [投票][編集] |
胸を張ってむくれ顔してんだ
「あたしは独り、群れるのは嫌いなの。」
差し伸べられる手を振り払い
堂々と自由を振りかざしてるんだ
ツンとすました横顔に誇りを宿し
見る人全てを惹きつけてんだ
街行く人々の視線も何処吹く風で
気の向くままに尻尾を振っている
美しき野良猫はなにものも縛らず縛られず歩いてる
気高き誇りを相棒に
あんたを飼い馴らせるものなど
何処にもいなかったはずだろう
「あたしがじゃれつくのは自由だけ」
何時からかむくれ顔に影が影が差し始めてんだ
「あたしは独り、あたしは・・・独り・・・」
差し伸べられる手に心惹かれながらも
今まで信じ続けた誇りだけで胸を張っている
ある日ツンと澄ました横顔に
誰よりも温かい手が差し伸べられたんだ
「下ばっかり向いていても世界の色は変わらない。
恐がらずに上を向いてごらん」
美しき野良猫は自分を見失った
貫いてきた自由に迷いを持った
初めて寄りかかる場所を見つけた猫は
全てを委ねて眠りについた・・・
「ここがあたしの居場所・・・」
幸せな時間は少しずつ形を変え
温かかった筈の手が冷たい鎖になってたんだ
首輪で繋がれ鞭で打たれ
野良猫はその目に光を失ったんだ
繰り返す痛みに怯え
一度知ってしまった人の温もりに縋り
いつの間にか滲んで世界が見えなくなっていたんだ
本当の色すらも分からなくなって
美しき野良猫は可愛そうな飼い猫に成り果てた
起き上がれ鏡を見ろ あんたに首輪は似合わない
思い出せあんたは野良猫
自由気ままな気高き猫
あんたを飼い馴らせるものなど
何処にも無かった筈だろう
美しき猫は全てを思い出した
「あたしは独り、馴れ合いは嫌いなの」
温かい手よ あなたはあたしを見誤った
あたしの美しさは自由気ままな野良猫気質
そうよ あたしは気高き野良猫
人々があの美しき野良猫を忘れ去ったとしても
きっと今もどこかで
気の向くままに尻尾を振っているだろう
気高く美しい彼女を飼い馴らせるものなど
何処にもいない筈だろう・・・
psいつまでも気高く美しい貴方に捧げます。