詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
あなたの心が もし
頻繁に辛くなるようなら
あなたはきちっとさんです
きちっとさんは
自分にたくさん決まりを作ってしまう
たとえば
友達はいないよりいた方がいい
かわいかったり
かっこいいほうがいい
お金がないと不幸だ
勉強はやるべきだ
こうなったのは○○のせい
嘘はいけない
自分に正直でなくては
お風呂は毎日入らなくては
食べたら太る
太っては嫌われる
などなど
あげればきりがない
でも、考えてみて
それらのきまりに合理的根拠はありますか?
(へ理屈ではなく)
もしなければすべて
思い込みということです
決まりを
勇気を出して
全部なくしてみて下さい
そこに残るのが本当のあなたです
今のあなたのままでは
たとえ願いがすべて叶っても
幸せにはなりません
本当の幸せの第一歩は
自分を好きになること
そのためには
まず本当のあなたに戻るしかない
決まり事を捨てるしかない
でも決まり事を捨てたら
自由になって
暴走してしまうと
思う?
絶対そんなこと
ありません
純粋な本来の自分を信じましょう
もともとの本質が
「負(ふ)」の人間なんていない
世界を怖れおののく赤ちゃんはいない
赤ちゃんは
言葉が話せないのを気にしない
鳥をみても
飛べない自分を責めない
鳥がちっちゃくなって
去ってしまうまで
歓びの表情で眺める
犬が寝ていたら
触れようとする
ね
決まり事がない
空っぽの人間は
すなおで
積極的で
行動的で
なんにもなくても
歓びに満ちている
それが
あなただったんだよ
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
ズボンのポッケからずり落ちた歌
笑うなよ
昨日を延滞してる
でも父親は
ズッコケながら笑う
オレンジをかじる
畑の泥を握り締めてた
手のひらの歌
バカラの黒い絨毯までは
現実的だった
パンダに誘われて
おじゃんになった
少年は
チューインガムにあの夜をくっつけて
鏡の中の自分に飛ばした
少女は
愛より
夢を
選んだ
住宅街が肌のキメに見える
シェイクが砂で出来てるのに
気付かない人形の世界
滑稽な循環
だれもかも
自分の日記を買おうとしてる
自らつけること
覚えやしないのさ
魂より
ずっと小さくなる
氷の
最期を見届けたことはあるかい
最初にあなたが見ているのは
あなたの薄い網膜
あなただけシネマ
私も誘ってね
たまには少し古い型のシャンデリアにもロウソクをともして
鬱くしい雰囲気
自分の名前が
ローズだったらなんて
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
車の座席にのせた
冷凍食品の大判焼きが溶けるのも
まったく気にせずに
私は車を飛ばした
昼か
夜か
過去か
終焉かも
わからない
時間の中で
見慣れた街の
見慣れない路地という路地を
走りまくった
溶けかけの大判焼きと
壊れかけの私と
うるうるした息子をのせた
オンボロの軽自動車
意外に頼もしいエンジン音
白黒の街に響く
勇者の掠れた歌声
孤独に付け入って
纏わり付く
粘っこい時間や 感情や
奇抜にカラフルな過去を
振り切ってほしい
わかったか?軽
だから、走れ
追いかけてくるやつらを
さらに振り切って
大判焼きが溶けるのも
ほっぽって
苺ヨーグルトのフタにストローを
ぶすぶす刺して遊んでる
息子も
視界の隅に
ほっぽって
私はひとり
街が完全にスローモーションになって静止して
見えなくなるまで
走り続けた
家に帰ったら
ご褒美だ
マシュマロを
一つずつ食べようではないか
息子よ
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
君を 想っている
君は 遠い近所で 空をみている
君はゆっくり回る白い風車の下にいる
鏡に空を映すと
無くしたものが映るというが
私がそうしても
君は映らない
ある時君は
長身の捜査官で
オンボロのアパートに
売春婦の私をよんだりする
呼んでおいて
疲れてソファーで寝てしまう君
書物が床に積まれた薄暗い部屋の隅々
あれはウォール街だっけ?
君の体は しなやかで白い
やや筋肉質な背中
たくさんの人と
愛しあい
結婚して
子供を作り
パッチワークとかするようになって
いよいよ君が頭から離れない
君を手に容れたらすぐに物語は終わるのに
ある時
君は 美しい海賊で
黒い帽子が
赤い海に落ちた時
私は 小さな島の白い海岸で
一筋の朝焼けを見ていた
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
別に土産のおまんじゅうの名前ではありません
彼は 列記とした夢太郎でした
夢子でも夢男でもなく
先日 うちの実家に転がりこんだ夢太郎
母は嫌がり 市役所に電話したが どうにもならないというので
結局私が引き取ることになった
母は自称リアリストだから
そして毎日
夢太郎は延々と夢を語る
そしてテレビCMの合間に鼻をほじったりする
ストローの先を噛みながらジュースを飲む
彼はさらに夢を語る
彼はサラミの包み紙を折りながら
もし俺がスーパーモデルだったらなんて 話し出す
ハンバーグに入れる玉葱は少し炒めてから挽き肉とまぜろ とか
なぁ 俺が映画監督ならばすごいぜ とか
私は 次第に夢太郎と過ごすのが苦痛になってきた
ある雨の日
ついに夢太郎が消えた
それとほぼ同時に
うちの庭に
原色の唐草模様の電信柱が立っていた
ある日部屋を片付けているとき
忘れかけてた夢太郎の日記らしきものを 見つけた
その中に
「もし俺が電信柱になったら」
という項目があり、詳細な絵も描かれていて
その絵が庭の電信柱の柄と同じだった
彼はなんと夢を叶えていた
間違いなく彼は
夢太郎だったのだ
ただ雨の朝
その原色の唐草模様の電信柱をみるたび
なんとも言えない複雑な気持ちが込み上げ
少し私は欝になる
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
南の島に住んでいる人はストーブを欲しがらない
なぜなら
ストーブは寒さを凌ぐために考え出されたものだから
一年中暑い場所では必要ない
必要とする人が必要な物を作りだし、それを使う
だけど
南の島にいても
ストーブを欲しがる人がいる
北極にいてプールをほしがる人がいる
砂漠にいて船をほしがる人がいる
動物園で
ダイヤモンドを探す人がいる
それは
ただ欲しいというだけで
彼らは 自分がなぜそれらがほしいのか
考えたことはない
ただ 欲しがっている
彼らは物ではなく
満たされた自分を欲しがっている
自分に必要なものを求めるのでなく
自分の欲しいを欲しがっている
喉が渇いたと言っては
塩をむさぼり
渇きが癒えないと
怒っている
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
死んだ動物を見て
かわいそうと思った
慣れてくると
ただの死体だと思うようになった
あるとき
ふと美味しそうだと思った
死体を食べてみた
うまかった
もっと食べたいと思った
死体で金儲けができそうだと思った
考えた
たくさん殺す方法を
進歩だといってすべて許した
誰のための
何のための進歩なのかは触れなかった
そして
考えた
命をもっと
美味しくする方法
いっぺんにどっさり集めて金に代える方法
命を
命を
命を
いただきます
おかわり
おかわりおかわりおかわりおかわりお
かわりおか
わりお
かわ
り
ねぇ
母さん、人間がいるよ
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
僕は君のことをよく知らない
君の顔も
名前も
今何に悩んでいるかさえ
ただね
顔も名前も悩みも体型も知識だって
どれをとっても
君ってわけでもないさ
つまりさ
君は無限だと思う僕は間違いじゃない
まわりくどくてごめん
ただこう
伝えたいだけ
僕は君のすべてが好き
考え方も 癖も 君の「好き」も「嫌い」も
君の過去も未来も
センスも口臭も瞬きのタイミングも
君の持っている
想いも 涙も 脆さも 弱さも 醜さも
すべて好きだ
君は僕の憧れで 尊敬で 笑顔で塊で すべてで
太陽で花で月で海で
僕に出来ることなんて
ちっぽけな頭で君の深さをイメージすることくらい
ねぇ
君が好き
君の中で泳ぎたい
傷という羊水の中で泳ぐ君は詩人
そう
やっぱり
ねこそぎ
君が好き
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たまには顔でも見せなよ
昔の上司は、重い扉の側でそういった
もと同僚たちは私の目も見ずに、
談笑しながら自販機の前を通った
副主任はお元気ですか
私は彼女が好きだった
すごくガリガリで
どぎつい性格だった
理論武装で
後輩をやり込めるのが上手かった
自分にも他人にも厳しい人だった
みんなから嫌われていた 偉そうだった
仕事は完璧にこなして
いつも指に絆創膏をつけてた
マスカラを厚く塗った目は
いつも鋭く冷たかった
私は彼女が好きだった
無意味な事は口にしなかった
お金もちになるのが夢なんだ
いつかそう言った
やめちゃうんだ…
私にそういって
一瞬寂しい眼をした
その後はまた
氷みたいに冷たかった
私は彼女を守ってあげたかった
変な話だけど
私はよく彼女に泣かされたけど
本当は彼女の涙や
傷を
癒してあげたかった
彼女はきっと私を
鼻で笑い飛ばすだろう