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剛田奇作の部屋


[102] メトロポリス
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

甘い夜空、

高くそびえる透明なカクテル・ビルへ繋がるのは


氷河セントラル・ホール


トロピカル・イエローの光を遮るのは


三年と六ヶ月、長引くカジノのキャンドル会議


水中エレベーターがスライド、乗り込む記者たち


漆黒の鮮やかさが、スーツに身を包み


歌いながら語るのはアイドル・ヴィーナス


エスコートするのは、太陽の残した僅かな埃


地上へ出れば


人込み独特の甘い香り


ベルトはまだ緩めないアニマの本能


急ぐでも、くつろぐでもなく
漂流する人々の、頭上へ


砂漠から来た飛行船ペリスがゆっくり上昇


大通りには森がひしめき

ざわめく星空プール

揺れる歩道、靴の鈴



やがて


人々が深海の浅い眠りに漂うころ


都市は目覚め、レトロなミュージックが響く駅には儚き恋人たちの姿


ストイックな国道へつながるフィッシュ・センチメンタル


トマト色の交差点に生える、
樹齢不明のネオンサボテン


マリンブルーの標識を見つければ裏通りのピンクネオン街頭


浮上する
トランプ騎士団の恋占いの館


今にも溶けてしまいそう、複雑な立体駐車場


月まで帰るのはキャンディでいっぱいのバス・ストップ
『レジェンド』



眠りたい


眠れない


甘い 香り


溢れて、脳天に浸透する


麻薬のように 爪先から
忍びこんで
濡れた髪を滑り落ち


夜風いっぱいに甘美が佇む


人々の官能に
この都市をあけ渡して


沈まない夢は
永遠の真夜中に浮かび上がる







2008/12/22 (Mon)

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