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剛田奇作の部屋


[286] トンネル
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

はじめ、なんとなくふわりと入った

いやなんとなく?

違う すべては

私自身の「意思」だ

そして 今

果てしないトンネルを歩んでいる

どれほどの時が流れ、どれほど進んだのか、わからない


あの時引き返していればと、幾度となく思う


今となっては振り返る事すら恐ろしい


ある日事件が起きた


トンネルの闇の中に
老人がいた


私は話しかけようと口を開きかけたが

人に会えた懐かしさに胸を打たれ、たたずむしかできなかった


しばらくして老人は、言った


「お前の知りたい質問に、一つだけ答えよう」


…………トンネルに出口はあるか?
あとどれくらいで終わるのか?
あなたは何者?
トンネルの向こうはどうなっている?


疑問が山のように溢れた


私はかなり長い時間考えていた


そして究極的に尋ねたのは、トンネルの長さでもなく、その向こうでもなく、いつ抜けられるかでもなかった



「このトンネルの意味は?」


老人は、初めてその顔を上げ私を見た


「このトンネルは、お前自身だ」


老人は答えた


老人の瞳は微笑んでいるようにも、泣いているようにも見えた


もし自分自身に意味はないと思えばトンネルにも…


希望とも絶望ともつかない

何か究極的な感情が私を満たしていった








2009/12/07 (Mon)

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