詩人:浜崎 智幸 | [投票][編集] |
そのたなごころに氷のかけらを載せて
水に戻るまで見つめている君よ
歩いていこう 死にたいときほど
会えたのに別れ 恋した人もいまは別々の町
生まれたときから人は平等じゃない
報われぬ明日は何度でも来るのに
切歯扼腕(せっしやくわん)するしかないけど
信じても別れ 許した人もいまは別々の恋
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・
粉々に砕いたら白くなる
澄んだ石英
物陰で泣いていたあの人の
涙にも似て
──愛する人はどこにいる?
──愛は形がない気体(期待)?
ふりそそぐ白い粉
▽
いつの日かあの人を思い出し
泣く冬がくる
大切なあの人の名前さえ
忘れる頃に
──終わらね愛はどこにある?
──とても優しい人の手に?
ふりかかる白い粉
★★★★★★
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──洗髪──
めを
とじているんだよ
つよく
なみだをこらえるときのように
まだ
とじているんだよ
きっと
じぶんをにくんだときのように
もう
めをあけていいよ
せかいは
おまえのものだから
ね
(点字による原文)
──せん°はつ──
めを
と゛しているん゛たよ
つよく
なみ゛たを こらえる ときのよーに
ま゛た
と゛しているん゛たよ
きっと
゛し゛ふんを にくん゛た ときのよーに
もー
めをあけていーよ
せかいわ
おまえのもの゛たから
ね
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…
木炭バスと言われても、想像もつかない。
ただ、故障が多かったとか。
それでも、その日の故障は最悪だった。
長崎市の北の入り口、打坂。馬を鞭で打たないと登らない坂という意味らしい。またの名を地獄坂。曲がりくねった道、片側は崖。現在では想像もつかないが、当時の地形図はまさにそうなっている。
そこで故障。
ハンドルもブレーキも効かない、最悪の事態。
バスはずるずると崖に向かって後退していく……。
若い車掌が飛び降りた。
近くの石をタイヤに噛ませ、輪止めとするが、三十余の乗客の重みのかかった車体には効果がなかった。
ずるずると、ずるずると、崖へ。
しかし、奇跡は起きた。
何かに乗り上げてバスは止まった。
……もう、想像はつくのではないだろうか。降り立った乗客や運転手が見たものを。
横たわった車掌の体と、それに乗り上げたタイヤ……。
▽
「息はある!」
自転車の急報を受けた麓の営業所の職員は、軽トラックで現場に戻り、彼を荷台に載せた。
炎天下。荒い息は徐々に弱くなっていく。
……結局、助からなかった。
この勇敢な車掌の名は、鬼塚道男さん。享年、二十一。
これだけの出来事なのに、長く人々の記憶から消えていた。
それが一番 信じられない。
現場に地蔵尊が祀られ、顕彰碑が建ったのも、事故から時を経てからだった。
語る義務があるのではないか? 知った者には。
騙りがあってもいいのではないか? 顕彰の目的ならば。
SNSは、その手段となりえないか?
何度でも、語る。間違いを恐れずに、語る。
涙にぼやける液晶画面に、すべてを託す。
今日も地蔵尊は、安全と生活を見守っている。
生者が怠惰ではいられない。
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・
生まれたばかりの愛 君の前で光れよ
笑い声をたてよう 妖精たちのように
泉へ いつか行こうよ
静かな瞳がほしい
透明な宝石を 森の奥に探そう
軌道それた惑星 森の奥に探そう
泉が 今日も呼んでる
涼しい瞳がほしい
女神たちの沐浴(もくよく) 僕は見てしまったよ
それで殺されるなら それも仕方ないこと
泉が 夕陽を抱くよ
寂しい瞳がほしい
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夜のなかに生まれ 朝のなかに育つ
愛は空へ走る青い羽の鳥
闇のなかで見えず 君以外は見えず
月の示唆するまま流れに染まりて
ゆらゆら ゆらゆら
漂い 歌うよ 気のむくまま
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夕闇迫れば
ひとりの窓で
君は 遠い人を想う
思いがけない 悲しみの果ての
変わりがたき 愛を想う
幸せはここにある
家野が丘をのぼるたびに 心喜ぶ
★
★
今宵はこのまま
眠りに沈もう
僕は 君に許されたもの
肌寒い夜に 風強い朝に
僕の 心 急がせるもの
幸せはここにある
家野が丘をのぼるたびに 心高まる
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葉漏れ日 手に受け
息をひそめてる
誰もが通った
軌跡は正しい
ああ 受け入れよ 受け入れよ 僕よ
ああ 菩提樹が 心にあるなら
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優しい雫の
かたちになりたい
点字で書かれた
祈りを読みたい
ああ まろくなれ まろくなれ 僕よ
ああ 白蓮(びゃくれん)が 心にあるなら
★
有学(うがく)の態度で
片隅にいたい
真冬の寒さで
自分を責めたい
ああ おこたるな おこたるな 僕よ
ああ 優曇華(うどんげ)が 心に咲くなら
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有学……仏教では「学ぶべきものがまだ有る」という意味になる。
優曇華……三千年に一度咲く吉祥の花。
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・
思い出をたぐり 息をひそめてる
ガラス細工の手本のような
一輪の花に
笑いかけながら
声を分けながら
絵の具を混ぜて筆を走らす
シフォン色の午後
水が飲みたいときは
この手を休めていい?
こどもみたいに華やいだ
じだらくな夢を見たい
意味のないこと積み上げて
それでも輝いていたい
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*縦読みで、おがわえみこ‖‖
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秋の夜更けは数多(あまた)の流星
吐く息白く闇に躍った
いつもあなたは夕刊越しに
見えないはずの夜景を見ていた
遠い町の空港では定刻に発つ飛行機が
赤 緑 きらめかせて
自由な町を目指してる
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※旅客機の主翼の両端には赤と緑のライトが光ります。(翼端灯)
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