詩人:和泉 | [投票][編集] |
ゆっくり変化する色に気付かないように
通り過ぎていった
カメラのシャッターを切るよりも
瞬きするよりも
一瞬は
あっという間で
加速する車より
ビデオテープの早送りより
一瞬は
あっという間で
その一瞬を惜しむより
その一瞬を求めるより
一生もまた
あっという間に
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闇夜に映える
あの長い影
踏もう と
追い掛けても
ひらひら と
蝶の舞い
もどかしく
鬼さん こちら の
誘い文句
触れようとすれば
逃げるくせに
空気のように
抱き締めること
できなくて
あの影は
闇夜で輝き
誘っては
日が昇るまで
舞い続け
影と影が重なるまで
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振り返れば
求めに埋もれていた
誰か 誰か と
叫びながら
自分はその場で足を止め
振り返る誰かを求めた
小さな傷を大袈裟に
誰かが声を降らせてくれるのを求めた
その傷は
とっくにカサブタに化け
そっぽを向いて
誰かが背中を押してくれるのを求めた
気が付けば
求めで積み重なって
自分からは
怖い と
砂糖より飴よりも
甘い甘い甘え
今からの脱皮
自分から を
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忙(せわ)しない人の波に
飲まれぬよう
見えないところで
必死に足をバタつかせ
溺れかけても
近くに藁は見当たらない
手を差し出して
引き上げて
足が鉛のように重く
重りとなって
沼の底に引きずられる前に
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あの日
終わりを見た夢は
涙の底に沈んだ
目覚めたあとの
空っぽな感覚
夢の中で
あたしは何かを失ったのだろうか
だが しかし
夢は記憶の奥底に消えていた
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瞳は僕を捕えているなんて
とんだ勘違い
わし掴まないで
心臓 痛みます
リズムを崩し
不安定です
その鋭さは
僕を呼吸困難にし
赤い頬も
暑さのせいにする
声が響くたび
比例して
高鳴るのは何ですか
瞳が僕を捕えているなんて
とんだ自惚れ
溢れるは
塩味スマイル
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渦巻いていた私の中のもやもやが
誰が付けたか分からない火で
ぽとり と
静かに消えてゆく
あなたが
私から離れていったのは
この渦のせいなのだろうか
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素手で触れてしまったなら
傷付けてしまいますか
一定の距離が眼について
並ばないように足の速度を落とし
さらけ出さずに
行けるところなんてどれくらいあるのでしょう
何かを恐れ
足元ばかり見て
雨が止んだことにすら
気付けないなんて
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誕生日にプレゼントより
母の日にカーネーションより
あなたからの電話が
母は兄の贈り物よりも
兄の声が聞きたいと
兄と話す母の顔は笑みで溢れ
“優しい母”の顔なのです
プレゼントよりも
カーネーションよりも
「元気?」の一言でも
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たまにちらりと見えるそれは
あまり見たいものではなくて
見て見ぬフリを
演じ
心の中でそっと呟く私は
笑顔を振り撒いて
気付いてないよ
傷付いてないよ
自分に暗示をかける
見え隠れするそれは
私にも有り得ることなのだろうか
彼女の笑顔
まるで静止画のよう