詩人:はるか | [投票][編集] |
水色のドアの向こうに
またひとつ
奥へと通じる
扉がある
それぞれの部屋に
君はいて
だけど どれも
本当じゃないなんて
そんなことないわと
君は笑って
また別のドアの鍵を
残して消えた
笑ってる君も
淋しそうな君も
僕にとっては
ひとつだけれど
毎日見上げる空が
色を変えてくように
私の心も無限にあるの
と言って
僕の腕をすり抜ける
水色ドアは涙の色
弱さを見せない君が
必死で守った本心
鍵は捨てるよ
ただの形にすぎないから
僕に君は一人いれば
いいんだ
君が居てさえくれたら
それでいいんだ
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メリーゴーランド
回る 回る
恋する気持ち
たとえば 誰かを
好きになることで
少しだけ優しくなれたらいい
綺麗になろうって
頑張ってみたり
深く物事を考えたり
自分のいいとこも
そうでないとこなんかも
見えてきて
改善点をノートに
書きつらねてみるの
時々はそんな自分
少し褒めてあげたりとか
ちょっとしたきっかけを
作ってくれたあの人に
感謝して
微笑んでもらえたら
それこそ有頂天になって
回りにある人や物でも
なんでも
気持ちのおすそ分けしたくなるわ
見過ごしてた道端の花に
おはようと声かけたり
歩道を横切る蟻んこも
踏まないように回り道
したりとか
今まで気にしてなかった
小さな生命に
自分を重ね合わせて
頑張ろう、頑張ってね
恋が回る
優しく私を巻きこんで
巡り巡って
もっとあの人を好きになる
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行きつけのBarで何度か
隣り合わせた男に
その場限りの相槌をうつ
耳慣れないJazzは
Masterの好み
あたしが生まれるもっと前の
知らない時代
背の高いStoolの
回転椅子に合わせるように
背伸びしてはいた
ヒールのかかとが疼きだす
男のお喋りは止まらない
気がかり顔のMasterに
ちょっぴり眉を
しかめてみせる
心のうちを探りたいなら
月の見えない晩にして
琥珀色した液体に
今夜は思いを溶かしたいの
グラスの水滴が
したたり落ちるのを
黙って眺めたい
そんな夜もあるからと
言葉にする前に
消えて欲しいのよ
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覚えてるのは
あの日の桜
舞い散るという言葉が
よく似合う
花びらのあめ 雨
また雨
通る人々は
その幻惑に酔いしれて
急ぐ足元を緩めている
泣きながら
終わった恋を
ぶらさげて歩けば
自転車のうしろから
背中ごしに見えた
去年の桜が
よみがえる
恋した景色に
君がいたもんだから
どうやったって
視界から外せない
気持ちだけは
永遠に残るんだって
こんな形で
分かってしまって
なぐさめの言葉も
のみこんだ
紛れもない
君の面影を
消すには あと少し
早いようで
今は ただ
素直に綺麗だって
この桜雨に
慕ってあるくだけ
散りゆく恋に
精一杯のはなむけを
そして私が
全てを許せるように
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毎晩なんて言おうか
考えてたの
お行儀よく
三つ指ついて
お世話になりました
なんて
恥ずかしくて笑っちゃう
でも ホントはね
泣いてしまいそうだったから
人一倍、頑固で
甘ったれの小娘が
人並みに嫁にいくってさ
気の利いた言葉も
言えなくて
こんなんで務まるもんかって
あたしの肩に
手をのせて
ぽろぽろと笑った
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流れる人波を
視界の端へと追いやる
広い 広い街の中
記憶を摘んでひた歩く
ここに来る理由も
来なかった言い訳も
月日と引きかえに消えて何も残らない今
変わるのは悪い事じゃ
ないと
今だから思える事も
あると知る
街は変わり
人も変わる
時間はながれ
心はほどけてゆく
見ようによっては
全てが違って見える
少しだけ 振り向いて
みたけれど
それは ただ
それだけのこと
今ある景色も
小さなわだかまりも
風が気付かず
通りすぎるように
すうっと肩を
撫でていくだけ
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あの地平線の
先を見に行こうよ
何かあるかもしれないし何も無いかもしれない
今僕たちに
必要なものって
何だろう
全て失くしちゃいけないものも
初めからなけりゃ
それは それで
意外とそんなものかも
しれない
好きなものを
大切に思えることが
いいんだよ
そんなことかと
笑える方が
素敵だと思わない?
果てしなく
空想をめぐらせて
君が今、かじったパンのどれ程美味しかったか
沢山言えた方が
勝ちとか
波に削られる
かかとの砂が
くすぐったくて
お腹がよじれるくらい
転がって
抱き合って
それが全てだと
僕と君が
感じ合えることが
出来るなら
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花の美しさに
目を奪われ
本質を見失う
水をやり
肥料をまき
必要なものは与えたと
自己満足の極み
隣の庭の鉢植えと
見比べて
人並みに怠惰な安堵
綺麗な花には
トゲがある
見えないところで
強かに舌を出す
根元は土から
腐ることを知らない
意味のない品評会は
誰のため
温室で黒い夜露を流す事も知らず
時間のない言い訳を
考えながら
今夜も眠るのか
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規則的な感情で
規則的に
積み上げられていく
洗濯物
着そびれたセーターの
手ざわりに
少しだけ気が和む
もうとっくに
許している
心がそれに
追いつかないだけ
飽和しきれない
悲しみの
飲み込み方だけ
上手くなっていく