詩人:さみだれ | [投票][編集] |
ここは虹の中
神様のおなか
ベルが鳴ったら
二人は心静かに
耳をすませて
おでこを合わせて
手を取り合って
誓った口を閉じて
知らない世界の
素敵な催し
どこからともなく
羽をもった人が
拍手をするよ
道を開けながら
星のめあてが
教えてくれるよ
何も怖れなくていい
何も失わなくていい
手に入れたもの
大事にしなきゃね
ベルが鳴ったら
車に乗って
どこか遠くへ
晴れてるところへ
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あなたは人に優しくしてるの
優しくされたい相手にばかり優しくしてるの
あなたは自分の位置を理解してるの
理解してなお自分を大事にしてるの
あなたは人に大事にされたくて
自分を売っている娼婦
あなたは自分のアルコールに酔っているだけ
そんなあなたがまともでいられるはずがない
あなたは幸せを望んでいないもの
そんなあなたが他人に寄り添えるはずがない
あなたはただ自分が欲しいだけ
あなたの心は誰にも行き渡らない
氷のような涙を痛いとか美しいとか
溶けてしまってからは忘れる
雲のような移り気な気持ち
ひとりぼっち
あなたはいつも可哀想ね
そう言われたいの
あなたはいつもかっこいいね
そう言われたいの
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土曜日の午後
列をつくって
給食のエプロン
真っ白の袋
ぶらぶら振り回したり
ぱふぱふ叩いたり
結局いつも同じところ
フックで吊って帰りましょ
あ、そういえば
遊ぶ約束
急いで帰ると
邪魔なエプロン
だけどちゃんと忘れずに
持って帰ってるから怒られない
また明後日持っていかなきゃな
そのときはよろしく
ランドセルのフック
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おねがい
つきへつれていって
まっしろになりたい
かがやいてみたい
アンドロメダのこえを
きいていたいね
エイリアンとともだちになれば
みんなこわくなくなるね
おねがい
つきへつれていって
やさしくなるんだよ
いまよりずっと
だからおねがい
うさぎにへんしん
かがやいてみたい
そしたらちゃんと
ひとりでねるから
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船があれば
あなたのいる世界など
たった数日で行けるのだろう
波があれば
あなたに宛てた手紙も
いつかは届くのだろう
いつもここで
電波を待ってる
私を見つけて
迎えにきて
真っ暗な天井
太陽を避けた
クレーターに落ちた
涙はすぐに消えた
誰もいない
だから声の意味を失った
寒い夜ばかりの
私だけの世界
離れていくあなたを見送って
光も届かなくなるころ
私はあなたの知らないところで
死んでしまうのだろう
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泣かない夜はない
彼女は震えた声で
駄々でも悪口でもない
悲しみを呟いた
悪戯な人は
何でも言うけど
彼女が変わるわけじゃない
なぜ泣いてるの
聞けない臆病
どこか遠くへ行ってしまえよ
泣かないでくれよ
困らないために
僕のエゴだけじゃ彼女は笑わない
いっそ夜なんて
なかったらいいのに
彼女がそれを望んでいるなら
何もしない
何もできない
何も聞こえない
彼女は泣いている
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空は青々と
世界をひとつに
ただ広すぎる
距離が遠すぎる
幻の中に
白く浮かんだ
輪郭ひとつ
手に届かない
いつでも淡いまま
影が通りすぎて
気づけば数年
目も悪くなった
君の名前を呼ぶ
それだけのことが
いつからかできなくなって
声も出にくくなった
悲しみは有限だと
信じた作者は
幸せになることを
前提に書いた
信じたい言葉を
信じられないくせに
そんなありきたりなことを
信じていた
この空は永遠ではない
世界はひとつじゃない
そこにいないもの
そこにいるもの
あなたはひとつ
広い世界のひとつ
違う空を見て
知らないものを信じる
あのときの幻は
私の作った幻
触れられるはずなどなかったんだ
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人のためになんて
うたえない人だから
優しさひとつ
気づけない人だから
不格好なコート
重く感じるんだろう
見上げた空の広さ
伝えられないんだろう
慣れない言葉ばかり
使っても似合わないから
下手な字をこれ以上
見せられないから
隠し続けてきた本音
仕舞った場所が見つからず
目の前にいればなんて
誤魔化してきたんだろう
ここまで全部自分のこと
ここからは全部あなたのこと
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彼女は冬のころ
母の優しさになる
それは温かくて
甘ったるい時間
みかんな彼女は
窓を拭くのが好きで
僕が帰ると
いつもカーテンが閉じているけど
たまに星空を見に
カーテンを開けると
まるで外にいるような
そんな錯覚
思えば彼女は
僕に色んなものをくれたけど
僕ってやつはそんな彼女に
何にもあげてない
庭の花を大事そうに
触れている後ろ姿
鏡の前でにこにこ笑って
振り向いたときの目
ときに僕は
彼女の存在というものを
どれほども理解していなくて
たまの休みに
彼女を目で追うことでしか
彼女を知ることができなくて
思えば彼女は
泣いている顔なんて
僕に見せたことがなくて
たまには思いっきり
泣かせてやろうと
僕は腕を開いた