詩人:さみだれ | [投票][編集] |
何かを失って
戻らないと知った
心に穴が開いたような
それが悲しみだったのだろう
涙は出なかった
それでも悲しみだったのだろう
これが乾いた涙だろうか
泣けないということだろうか
数えきれないほどの物語も
本質なんてまるでない
この感情こそが物語で
まぎれもない真実
たぶん今泣いている
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あてのない一本道が永遠か
いつか帰ってくることが永遠か
歳を取らないことが永遠か
今度生きるとき
エイリアンかもしれない
魚かもしれない
元素かもしれない
神様かもしれない
永遠じゃなくていい
人として生きている今が一瞬か
それでも時間が許す限り
永遠のように生きよう
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心臓の音
ぶち抜いた壁
伝言はひとつ
「笑っておくれ」
変わらない色
変わっていく人
意味を与えたように
存在をおくれ
単純な気持ち
好きだ、という
見えない光
どこで輝いているの
もう一度
音を消す
触れた指が
冷えていくとき
名前を呼んで
好きだ、と言って
笑ってほしい
声にはしないけど
心臓の音
届けたよ
覆った空が
泣いているよ
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あなたが求めるような恋の詩を
私は書けそうにありません
あなたが感じているような社会のいざこざを
私はよく知りません
あなたが求めるような生活の詩を
私は書けそうにありません
あなたが信じている物語を
私は読めてはいません
黄昏の君を呼び止める
そんな自信があるのなら
呼ぶより先に手をとろう
そんな希望があるのなら
あなたが求めるような悟りの詩を
私は書けそうにありません
あなたが宿している感情を
私はよく知りません
あなたは理解を欲した
私は理解されずに
風にもなれない残り香が
あなたの忘れ物
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暗い部屋の中
ふたりきりの夜
誰にも知られない
会話をひとつ、ふたつ
枕元に星を
光を置いたまま
終わることはないと
思っていたのに
世界の心の中
幸せなつながり
終わることはないと
思っていたのに
何かがそっと
幕を下ろしたの
何かがそっと
心を閉ざしたの
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人は変わって
僕はいつまで
この場所で変わらずにいるのだろう
夢見ていた
楽しい毎日も
当然のように終わりを告げる
それは夜明けの
明星のように
忘れられてしまうものだろう
この月影を
見ているのなら
声を便りに送ってほしい
手の中に隠れるほど
ちっぽけな光を
集めて君に送るから
人のように
僕の心が
誰かの胸へと向かうのなら
手放せないと
言ってもらえるほど
素晴らしい心に
どうかなりますように
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見慣れた町並みに
影が落ちたの
知らないふりしてたね
つまらなそうにガムを膨らませて
隠した陽の欠片
墓場まで持ってくのかい
だってそうでしょ
あなたがいけないの
私は正しいことを言ってるわ
どうしてわからないの
突きつけられた遺書
滲んだ字だった
その原因を考えず
ただネクタイを締めるのに時間をかけて
大事なことなんて
そこいら中にあるというのか
この世界
その人間
あの心
どうかわそう
そればかり
受け入れる器なんて
他のもので埋まっちまってる
そうだろう?
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想像の星に
彼らは生きている
種から生まれた羊の群れや
分裂する草花
蒸気の町
ベッドの中の掟
それが乖離の宇宙にできた
彼らの生活
心はひとつ
神様のものだ
幸せならみんなで踊り
悲しいならみんなで泣く
だから彼らは争わないし
愛することもしない
他人を理解することもしないですむ
自分というものに臆することもない
想像の星に
彼らは生きている
乖離した宇宙に
それらは生まれている
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なんとなく毎日をだらだら生きてるのがね
たまらなくしんどいわけよ
気が付けばなんたらかんたら
そんなことばっかり
できるならエスカレーターとかエレベーターとか
気づくことなく生きていけたら
もう最高だろ
今までそうだったんだよ
先が見える人生だったよ
保育園、友達できるんだ
幼稚園、遠足いくんだ
小学校、卒業するんだ
中学校、卒業するんだ
高校、卒業するんだ
ね、そんな感じだったわけ
それが急に「サバンナだよ。どこにでも行きなよ」なんて言われたら
まぁテンパる
慌てて行き先入力して
ワープしたら最後
死ぬまで続く旅
目標とかない
ただ歩くだけの旅
そんなもんです
私とは
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オレンジジュースの海に
船を浮かべて
詩を書いていた
満月の兎は
それを見て
いつも笑っていた
出来損ないの神様の
玉座に書いた落書きは
詩でもなく愚痴でもなく
ただ美しいものとか
素晴らしいものとか
そんなありきたりなものを
書いたような気がする
グレープジュースの海に
涙を浮かべて
詩を書いていた
太陽の羽が
ふわりと落ちて
これでいいんだ
そう思った