詩人:さみだれ | [投票][編集] |
詩に焼き付ける言葉の一つ一つが
蛍光灯の前で踊っている
はしっこで立ちすくんだ言葉は
主役になれないと家で泣いていた
それを見た言葉の重鎮は
詩をひとつ見せた
古い時代の叙情詩は
輪になって踊っている
火の下で手を繋いで
泣いていた言葉は泣くことをやめた
言葉の重鎮は言う
"神様が変われば人も変わる
ただ忘れてはならないのが
私たちはどれほど長い月日が経とうと
変わらず伝えられていく
今日のことも
人が生きてさえいれば
お前たちはいつか幸せになれる
いつか主役にもなれるだろう
お前の存在こそが欠かせない詩だ"
詩に焼き付ける言葉の一つ一つが
豆球に照らされ踊っている
輪になって踊っている
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
ぜんまい仕掛けの猫が一匹
ちっとも進まないのに歩いています
一メートル先のにぼしに
食らいつこうと懸命に
ぜんまい仕掛けなものだから
ついに止まってしまいます
回してあげて、と祈る私は
幽霊のような神様です
しかしどうしてか全能ではありません
なので人間を作りました
あの猫が止まらないようにぜんまいを回してあげましょう
神様の命令は絶対なので
人間は仕方なくぜんまいを回しました
猫がまた歩み始めましたが
やはりちっとも進みません
私は人間に言います
猫のお尻を押してあげなさい
神様の命令は絶対なので
人間は仕方なくお尻を押します
しかし人間は意地悪でした
猫は大好きなにぼしの前
あと一歩だというのに届かず歩き続けます
私は人間に天罰として
空腹を与えました
同時に優しさも与えました
そしてようやく猫はにぼしにありつけたのです
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死を受け入れられるとき
影を潜めるのです
その幾つかの高らかな塔は
天国に届くことなく
影を潜めるのです
終わったことを喜ぶとき
影を潜めるのです
久遠の楽園の下に広がるは
与えられた概念に苦しむもの
それらは息を潜めるのです
暗くなりはじめました
迷子の案内は10分おきに聞こえます
照明がひとつ
店がひとつ
影を潜めるのです
それでもなお続くアナウンスに
誰が気づいたでしょう
みな影を潜めるのです
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心静かに過ごしましょう
雨風嫌わず生きましょう
夏の日にはスイカを買って
それから庭の花に水をあげましょう
捗らない日には夜を彩り
時間の果てに眠りましょう
いつか愛する人と離れるでしょう
いつも愛していられだろうか
そんな不安に苛まれるでしょう
冬の日には雪を避けて
冷たい手を湿らせるのを
あなたは忘れることでしょう
心空虚にさ迷えば
生きていると言えますか
心静かに過ごしていれば
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まばたきができるよ
きみとはなせるよ
あるけばとおくへ
ねむればゆめを
かみがのびるよ
きみがみえるよ
のばせばふれられる
まげればちかづく
おとがきこえるよ
きみをおもえるよ
むねだっておどる
きずつけられる
きみをあいせるよ
きらいにだってなるよ
しにたくもなる
しあわせにもなる
なにかできるよ
きみとおなじだよ
いつでもこきゅうは
つづいてるんだよ
いつでも心は
つづいてるんだよ
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楽しげな歌を
聞かせてください
自慢の大きなスピーカーではなく
安いイヤホンで
どうか眠りに誘ってください
ひとしきり満足したら
私は穏やかになりましょう
言葉より尊い
その声醜くはありません
本当に醜悪なものとは
あなたの欲するものの真裏に
いつだって佇んでいますから
白く焼けた空を
懐かしく思うわけ
刻まれたものは何も記憶だけではありません
太陽が囁くように
聞かせてください
新しいプレーヤーではなく
無償のぬくもりで
どうか眠りに誘ってください
ひとしきり安心したら
私は心を結い直しましょう
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まぶたの裏に星を見つけましたら
かごの中に仕舞って
そのまま出掛けましょう
どこへ行くかはあなたにおまかせ
さぁ、世界は広いよ!
友達の鳩はお腹を膨らませて
雲になりたかったと言います
隣人の狼は手袋をして
マスクで口を覆いました
ねぇ、君は君だよ
高らかに空に歌うあの子の目
夢の中にまで視界を作り
現実だと胸を張って歌っています
いつまでも信じられるかはあなたにおまかせ
ほら、未来は近いよ!
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愛しているよ
大事にするよ
毎日頬ずりして
高級石鹸で優しく洗うよ
君の好きな肌触りの布で
そっと包むよ
幸せにする
神様の前で誓おう
僕らの永遠の愛を
流線形の幻に酔い
静かに眠れ下衆共
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魂のないあなたの行き先は
白い大理石のお城でも
燃えたぎるマグマの中でもなく
魂のないあなたの時間は
青く澄んだ日の木漏れ日でも
涙を流すための夕焼けでもなく
魂のないあなたの記憶は
温かい食事を前に語らうでも
寒さに震える夜の寂しさでもなく
魂のないあなたを慈しむのは
春の穏やかな太陽でも
抱き抱え乳をやる母の手でもなく
魂のないあなたを閉じ込めるのは
しがない落ちこぼれの少年でも
微笑みを絶やさない老婦人でもなく
魂のないあなたの魂は
言葉の群れに紛れ
永遠に空を仰ぐことはできない
魂のないあなたの心は
世界の外れに在って
この目に映るものではない
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詩が聞こえるよ
遠くの方でぽつりぽつりと
耳をすませばいなくなるよ
詩が書けるよ
心の中にある世界を
ゆっくり確かにしていくよ
詩が見えてるよ
遠くの方でゆらゆらと
目をこらせばいなくなるよ
詩が書けないよ
心の中がひっくり返ると
すぐに不安になるよ
詩が待ってるよ
遠くの方ではしゃいでる
手をふればいなくなるよ
(代わりに愛してくれたなら
愛する必要もない
誰よりも悲観してくれたなら
楽しい気持ちでいられる
もっと早くに説いてくれたなら
理解しなくても慣れる)
詩が呼んでるよ
遠くの方で風に乗って
歩いていけたらいいのにね
そこにいてくれたらいいのにね