詩人:さみだれ | [投票][編集] |
何も持たない空は
青くなかっただろう
彼女が見上げていた
あの星も暗がりへ
私が歩く
あの階段もどこにもなく
だから思うのか
星になりたいと
彼女が見上げていた
あの星ほど明るく
何も持たない人は
生まれてはこないだろう
彼女が見つめていた
あの頃の手のひら
私は今も
あの手を離さず
だから思うのか
「死にたくない」と
彼女が見つめていた
あの手ほど温かく
優しくあろうと
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私を殺すのは私の詩だ
腹に突き刺さったナイフを抜くのは
君たちの詩だ
生きろと促すお前の声は
私の詩の残響に似てやかましく
ハウリングが高く高く高く
その首を思い切り絞めてやろうにも
私の詩が邪魔をして
自分は殺したくせに!!
私は何度も叫んだ
叫んだつもりだ
それでも私には死を与えてもらえなかった
(お前たちはたくさん殺したのに)
生きていれば…と呟くお前の声は
目まぐるしく色を変え私を蔑む
お前の手にしたそのナイフは
私の詩であり
君たちの詩である
私は今も叫んでいる
お前の首に手を添えながら
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私の記憶がたくさん消えて
言葉もたくさん無くしていって
あなたを思う夜の詩も
だんだん、だんだん拙くなって
そうしてあなたのことすらも
だんだん、だんだん思い出せずに
私の記憶は闇に食われて
ヒトであることすら無くすのだろう
あなたの顔が思い出せない
あなたの言葉が遠ざかる
あなたの手がわからなくなり
夕日の対岸のごとく彼方へ
この詩もまた同じに
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化け物でありたい
人を傷つけて笑えるように
フーガのごとく坦々と
人を傷つけて笑いたい
私の頭はタールの沼に
人を愛する肉がない
私の手は震え続けて
人を撫でることもできない
もういいや
夢で私を追い続けた影が
私を支配し隷属させようと
私にはもうどうでも
人間なんてみんなしんじゃえばいいんだよ
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パンを一口かじるだけが
あの子には永遠にも思える幸福で
世界の終わりがちらちらと
その背の向こうで顔を覗かせ
相対性理論を小バカにしたように
嘲笑うのです
私があなたを思うとき
星は木から木へと飛び回り
一番高い杉の天骨で
落っこちてしまうのです
明日友達に会うことが
あの子には一生分の幸福で
物語の終わりがもう
その次のページで待っていて
相対性理論は優しすぎたから
永遠にも思えるのです
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夜が明けるまで話をしようと
言えなかった僕は今じゃこんなだ
けどね神様
あなたも変わらない
僕と同じくらい悔やむ時があるだろう
どれだけ古い言葉や
優しい言葉を知ってても利かないこともあるだろ
死んだら雲の上に行けると言ってよ
生まれ変わるのはここじゃない場所がいいよ
夜が明けたらこの話はやめよう
信じられないことまで信じちゃうから
けどね神様
明日も変わらない
当たり前があの人に訪れると信じてる
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この日の糧に
あなたがひとり
なぞる水平線
世界はひとつ
花弁をゆする
あなたがひとり
風に捕まり
花は道を跨ぐ
部屋の片隅に
あなたがひとり
窓の向こうには
夜の飛行船
この日の終(つい)に
あなたがひとり
なぞる星の線
ひとつになった夢
雲の輪をくぐり
あなたはひとり
何よりも高く
明日を望む
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ジョン・タイターが語った世界線
その無限の糸のひとつに私の望む世界がある
エヴェレットが説いた多世界解釈
その無限の二者択一があなたを遠ざけたなら
こんなに複雑な因果を私は辿らねばならないのだろうか
観測する世界が私の死を越えて
なお拡散し増殖する
その背景にあるものはなんだ
あなたという存在を世界線に閉じ込めて
あみだくじのように指を引くのはなんだ
重なりあう自分自身を留めて
私は生きていきたいのに
この無限の選択肢の中にあなたを見出だすことも
同じ無限の選択肢なのだろう
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地球の尾っぽの先
スピカのずっと向こう
思い出になった光が隠れて
今、ゆっくり眠った
君の膝で寝息をたてる
彼はまだ知らない
交わる自分のもうひとつの
輝く姿を
この星のクオリアを
君が持てたなら
どこよりも優しい星になって
争いもなくなる
この星のクオリアを
私が持てたなら
君ほど優しくないにせよ
争いだけはなくそう
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さんざめく新緑の葉に
見果てぬ夢を知る
やがて訪れる静寂に
あなたは目を閉じて歌う
ささやかな祝福を
心からの喜びを
満たされぬことを知らないまま
生きる悲しみを
夢から飛び起きて
小径を歩けば
涼やかに揺れる青と
あなたの寝顔が背に添う
それは春の陽光に似て穏やかに
淑やかに微笑んで