詩人:さみだれ | [投票][編集] |
病室の窓から入り込む風が
カーテンを揺らす
彼の手には詩集があり
次のページはなかった
彼はそのことに気付かないふりをし
同じ詩の同じ終わりを読み続けた
裁判長は決めなければならない
彼の者の罪の重さを
自分を正当化するための算段を何度もした
間違った決断をしたときのために
誰もが納得するだろうか
正当化が下手な言い訳にならぬように
裁判長は何度も繰り返し考えた
それでも人は変わらない
絶対的な流れの中にあって
変えられずに溺れている
それは自己陶酔の意でもあり
現実的な意でもある
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波がさらうのは
あなたの浮き足立った心
人間てね
翼を持つと醜くなるんだよ
だから飛べないように
波がさらうの
無様に溺れるあなたを
魚たちはクスクス笑ってる
世に想われなかった?
ちゃんと想われているから
歩くことを出来たのです
今はそれを素晴らしいと感じるとき
満足して眠りたいなら
地獄の峠を越えてからになさい
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ある夜
人よりも悲しみ
あなたは涙を流した
あなたの涙だけが一人歩きして
この海は広く大らかなのでしょう
何万年もかけて
人よりも強かに
あなたは優しさを殺した
その優しさが生まれ変わって
この山は大きく包むのでしょう
1パーセクの思い出を
人よりも大事に
あなたは心にしまう
決して落っこちて会うことはなくて
この星は近づくこともしなくて
時が過ぎれば
人ひとりいなくなり
あなたは微睡むように在った
あなたの時間だけが一人歩きして
今も世界は続いていることでしょう
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朧に霞む
虚構世界を
あなたは真っ白に見ている
私は赤
突き刺して突き放す影
とんでもない悪疾よ
道理にならないならば
真っ白に見える目を
ストライプの愉快な町で
見えぬ現をぼんやりと
心のない者のように
口をあんぐり眺めていなさい
千差万別
虚構世界を
優雅に過ごすためにこそ
優しさを
突き刺して頬張るべきで
しかしそれも悪疾よ
目に見えて然るべきものが
朧に霞む
あなたの白が
また青を飲み込み
満足そうに眠る様を
私はうっとり見ているのだから
これはきっと夢に違いない
”安堵した寝顔に
口をあんぐり開けて
心ないもの眺めていなさい”
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私は朽ちた
いかに取り繕うとも
その芯は…
枯れ葉ほど美しい死に様はない
野焼きにされるほど清々しいものはない
食われようと
踏み潰されようと
誰かひとりのためにはなろう
朽ちて失われ行くときに何がある
記憶をたどることしかしなくなれば
それはもう生きているとは言えないじゃないか
某が頬を掠めるも
私は見ていない
ただぽろぽろと思い出をこぼすだけで
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ある日
空から羽が落ちてきました
その羽は最初青い色をしていましたが
僕の手に乗るとピンク色になりました
きれいだなぁと思った僕はお母さんに見せました
お母さんが手に取るとオレンジ色になりました
楽しくなって外へ出て友達に会いに行きました
その途中で出会った猫に羽を乗せてみると
昨日みた月の色になりました
今度は田んぼのカエルに乗せてみると
やっぱり緑色になりました
羽をメガネみたいにすると
くるくるころころ忙しそうに色が回ります
そうしているといつの間にか友達の家につきました
きれいな羽があるんだよ!
僕がそういうと友達は家から飛び出してきました
羽を友達の手にのせてあげると
羽は白い羽になり
ふっ、と風にさらわれました
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いつも感じていた
暖かな日差しに
並木のそばを歩く
あなたの足音を
どこかで思っていた
涙の流れる頬に
冷たく触れてくる
あなたの手のひらを
青い空を歩いていた
そう思っていた
だけどそれはあなたが見ていた
夢の続き
いつも感じていた
凛とした月の光
思えば照らしてくれる
あなたと繋いだ手を
時は風と共に
過ぎ去るばかり
変わり続ける景色に
今日を感じている
あなたがくれた幸せも
その微笑みも
そばにたゆたう風に
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神様がついた嘘を真に受け
私は一生を棒にふる
時計が進む音を聞いて
”世界はいつまで続くのだろう”
追われる朝も追う夜も
どこかで途切れていれば
そんなところに君はいるのだろう
地面を歩け、と押さえつけられ
誰もが一生を歩いた
遠くへ行けば何かが変わる
”世界はどこまで続くのだろう”
優しい母も無口な父も
ずっと歩いているけど
いつも振り向いてこの手を取るけど
神様が話した昔の思い出は
とても寂しかったと覚えてる
時間が戻らない音を聞いて
”世界はどれだけ進んだのだろう
どれだけ泣いて辛い思いを抱えてここまで来たのだろう”
そよ風が葉を揺らす木漏れ日の中
星たちが集まり歌い出す夢の中
どこかで途切れていれば
そんなところに私は行くのだろう
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あなたがもたれた三日月はもう
今では落ちてしまって
にっこり笑うこともしなくなった
星は集まりひそひそと蔑み
太陽はそ知らぬ顔で
魔女は空を飛ぶことをやめてしまって
飛行機が通ることもないけど
やがて人はそれに慣れてしまい
あなたもまた同じに
やつれて小さくなった月の背
森の向こうで毎日泣いてるそうだね
友達もいなくてひとりきりで
黄金に輝くこともできず
そして人はそれを忘れてしまい
あなたも同じに
ずっと見つからない夜の片隅に
今でも毎日泣いてる
だからね
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宇宙を漂流する気持ちが
ワームホールをくぐり抜けたとしても
その先がこの地球だとしても
私たちには何も伝わらない
隔絶された心の内は
何にもまして孤独だから?
臨界を迎えた知識には
装飾など無意味だから?
生まれてからずっと火星にいた人は
海の匂いを知らない
私たちには木星の空を仰ぐことはできない
宇宙に生まれた気持ちが
私の重力の中に来たら
その先がこの地球ではなくても
心を開きたい
あなたのことを理解するために
私は宇宙を漂う