詩人:さみだれ | [投票][編集] |
光より遅く
音などは無きに等しく
私は宇宙の外
あなたを知っているけれど
なんにも届かないよ
あなたの伸ばす精一杯の腕では
広すぎて
私の願う幸せでは
広すぎて
星の息づかい
複雑なメロディ
個々の光
その命の尊さを
あなたは臆すことなく
あなたの伸ばす精一杯の腕では
広すぎたけれど
私の願う幸せでは
足りないほど
あなた方は素晴らしい
私は宇宙の外
光に託し
この詩を捧ぐ
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役に立たない人間は死ぬしかない
生きてることに意味があるなら
知恵や感情など必要ない
私たちに備わった賢さは
言い訳のためにあるの?
私たちに備わった優しさは
娯楽のためにあるの?
役に立たないならいないのと同じ
役に立たないと諦めたなら
死んでほしい
酸素がもったいない
君は賢い生き物
人間なんだ
その賢さで神様をあっと言わせなよ
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呼吸が宙返り
反転した
君はママゴト
大変だ
時間の闇の部分
見えてるかな
忘れてはいけない
大切なこと
野生の人
飼われてる人
きっと捨てられた人いるだろう
改造した
心の電子回路
頭のプロット
変身した
君は素晴らしいと
称賛されながら死んでいく
呼吸が命綱
千切れそうだ
君は野生に
帰らなきゃ
きっとうまくやっていけない
魔物でもない君はやっていけない
機械化された君はやっていけない
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パンプキンなあの子はね
人間関係なんてものは煮物みたいなもんさ
なんて坊さん気取りで言ったけど
私、あなたといてふやふやになったことはないし
あなたと離れてお堅く落ち着いたつもりもないわ
ハロウィンにお菓子をくれと
パンプキンマスクの君は幼気
飴を何個か手渡すと
君は走って去っていったね
そのあと君は転んでしまい
パンプキンマスクは壊れてしまったね
君はたくさん泣いて
泣き腫らした目を擦り
飴を一個食べたんだって
パンプキンなあの子はね
嫌われたくないばっかりに
先生に首を垂れたわ
でもみんな嫌った
あの子は成績がよかったから
ねぇ、あなたは嫌い?
私がパンプキンみたいに
でこぼこ野道しか歩けなかったら
私がパンプキンみたいに
お堅く落ち着いたなら
私は知ってるわ
パンプキンマスクの行方
もしくはその最後
もちろん煮崩れしたわ
トロトロにね
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スペースノイドは詩を書いた
木星圏を航行中の恋人に向けて
一枚の電子信号が
船から飛び立っていく様を
我々は見送ることはおろか
気付くことすらできない
ルナリアンは詩を書いた
地球に住む家族に向けて
一枚の石ころが
燃え尽きていく運命に
我々は介入することはおろか
気付くことすらできない
地球人は詩を書いた
自分自身の心に向けて
一枚の紙切れが
皺だらけになり捨てられる日を
我々は平凡に生きることや
忙しく生きることで
気づかないようにした
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生きていれば
生きてさえいれば
朝の雑踏を
夜の静謐も
生きていれば
生きてさえいれば
君がいる時間まで
歩いていれば
また会えるはずだ
生きてさえいれば
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ここは丘
君たちが眠るとこ
昨日の悪夢を忘れ
平穏な夢を見られるとこ
理想にそっくりな
美しいとこ
それはね
みんな願いを携えて
高らかにそれを掲げて
素晴らしいと歌い続けた先
本当はね
宇宙の片隅にことりと置かれ
いつ消えてもおかしくない
繊細な命のガラス細工
そして
君たちは何かを求められることもなく
与えることもなく
ただ目を瞑り感嘆の息を吐く
ぼくはね
もて余した時間を
この丘にいることで潰し
そう
ただの宇宙の片隅である
この丘に優しく添いたいがために
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夏空の歪み
ゆする憧憬
カシオペア遥か遠く
君思うに
世界は広い
されど心は眼前に
私思うは
世界に一人きり
聞こえはしないか
夏空の囀り
絶え間なく
しかし優しい
君思うに
世界は近い
されど孤独が身にしみて
私思うは
世界に一人きり
触れられはしない
夏空の憧憬
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今夜は月が綺麗なので
私は旅に出ようと思う。
西へ西へと歩いたならば
日に焼ける心配もない。
私が旅に出た夜に
帰ってきてとせがむ者なし。
私は眼前に広がる夜のベールを
剥がして纏い歩き出すのみ。
血のない価値を見出だすことも
心通わせうち震えることも
この夜のうちは息を潜め
足音殺して旅に出る。
濁音のない月よ
陰りを知る月よ
私たちの身の程を痛々しくも示してくださる。
私たちは知識や情よりも先に
尊いものを見つけるべきだったのだ!
夜のベールを剥がせ
つれないコンダクターと離別し
旅に出る支度を。
月がよく見える方へ
私は旅に出ようと思う。
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その心臓は波をつくり
その息遣いは風となる
その手は山をつくり
その空虚は雲になる
その純粋は空をつくり
その心が私たちとなる
その寂しさが魚になり
その夢は鳥となる
その悲しさが犬猫になり
その希望が種となる