詩人:さみだれ | [投票][編集] |
神様が私を生かした
ううん、そうじゃないんだよ
私が生きなくてはならない世界を
私が死なずに生きてるだけ
あなたがいて嬉しい
その命も同じなんだ
夕暮れに春は生まれた
すべて輝いて見えるよ
雨粒も汚れきった歩道も
悪人の心でさえ
夕暮れに私は歩いた
とても騒がしい世界を
あなたが生きるためにある世界を
死なずに生きている
そんな命を
雪の下に見つけたよ
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
春の匂いがする
わたしはどこ
雪の下にいたよ
とても冷たいんだ
でもね
いつか溶けていく
そうあってくれたらいいのに
死にたくないな
あなたを愛していないうちは
死にたくないな
僕は生きるように仕組まれたんだ
死にたくないな
あなたが愛していないうちは
死にたくないな
神様はどうあがいても僕を生かすんだ
死にたくないな
あなたには
死にたくないな
僕の心だけ持っていってよ
あとは全部置いていくよ
あなたに
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
だんだんと遠ざかっていく
宇宙の始まりからゆっくりと
私の光は終わりに近づきつつも
燃えるような空の色を
保とうと頑張っていた
人である必要はなかった
何者でもよかった
ただ生きる夢を見ていたんだ
なんだっていいんだよ
限りあるなら終わろう
心なんて開け渡して
広がり続けるなら
ぎゅっと丸めて
庭に埋めてしまおう
やがて芽が出る
雨が降り 日が射す
少しだけ大きくなったら
空を見上げる
遠くて見えなくなった星を
なんとなく探す
風が吹き 季節が変わる
また少しだけ大きくなったら
君を探そう
遠くて見えなかった心を
露に映して
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
遠く聞こえるよ
駆けてくる君の足音が
まだまだ影は見えないけど
確かに
転んでケガとかしてないかとか
ちゃんと野菜も食べてるかとか
まだまだ聞き足りないけど
もう行くよ
いつか聞かせてよ
あの子がどんな子だったか
いつでも思ってあげててよ
どうか
僕は遠いところで歩いてるよ
後ろに影を伸ばしてさ
たくさん歩いてきたんだよ
これから歩いていくんだよ
君はいつか思い出すだろう
こんな日の終わりを
きっと見つけてくれるだろう
僕の見ていた太陽を
どうか
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
あなたの心に座り込む
孤独の虫が鳴いている
騒がしくて仕方ないな
追い出してしまいたい
雨の日は嫌い
歩く道がいつもより
狭く感じてしまう
ひとつ間違えば靴の中まで
冷たくなっちゃうから
あなたの心に映り込む
空の色が馴染んでいく
眩しくて仕方ないな
黒く塗りつぶしたい
歩くことに疲れはてて
喉が渇いたな、なんて思う
自販機まで歩ける力を
きっと隠し持ってるはず
あなたの心に詰まってる
あなた以外のたくさんを
たぐりよせたらもう大丈夫
僕だってひとりじゃない
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
しっぽを踏まれた
とても痛かった
同じように痛い人がいた
踏んじゃったから
でも君は「だいじょうぶ」って言う
痛くないよって
とげのついたしっぽをつついて
「ぼくのからだはとってもかたいんだ」
そう笑っていた
仲良くなれるかな
傷つけないように
寄り添えるかな
君は「だいじょうぶ」って言う
こわくないよって
誰よりも怖がりな君が
誰よりもあったかかったんだ
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
あなたの詩を書いて
私は生きる夢を見る
その中には他人がいて
やはりあなたはいなくて
あなたの詩を書いて
夜は瞬く間に過ぎる
その中には私がいて
やはりあなたはいなくて
私の意思は反映されない
おそらくどんな世界であろうと
あなたを求める声は足りない
私が万物の神であるならば
あなたをちゃんと作った?
あなたの詩を書いて
月は鳴りを潜める
手は届いてるかな
あなたのほうを向いてるかな
どんな世界であろうと
あなたを求める声を
生きる夢に私は放つ
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
目に見えないものを
私は信じたい
あなたを疑う心を信じて
あなたを見つめたとき
その形や色や輝く様を
心に閉じ込めて
いや、放ちたいんだ
オーロラの向こう
恒星が照らす星々を
この手に掬って
私は思う
暗い夜道を抜けよう
ランタンひとつでいいよ
足元を照らすだけの勇気が
歩き出す道になるのだから
クオリアは言う
信じてみよう、と
私はその声を初めて聞いた
ほんとはずっと聞こえていたのに
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
星をなぞる小さな指先
赤いニット帽が目を隠してしまう
それでも嬉しそうに笑うばかりで
直さずにくるくる回りだして
どんな風に見えているのだろう
君にしか見えない世界は
寒さに震える彼の手紙
赤いポストの前で動けずにいた
羽が生えて勝手に飛んでいけばいいのに
そう思う心が楽しそうで
どんな風に見えているのだろう
君にしか届かない世界は
ひとりぼっち夜道を漂いながら
色のない僕を街灯が照らす
ひとりぼっち今日が終わらないのは
きっと僕が笑ってないから
誰かを待っている小さな影
青いベンチに座って泣いている
その涙の色はなんだったっけ
僕にも流せるものなんだっけ
そんな風に思えるだろうか
君にしか見えない世界は
どんな風に見えているのだろう
僕にしか映せない世界は
ひとりぼっち今日が終わらないのは
きっと君と笑ってないから
白い指で星のような涙を掬う
どんな風に見せようか
この世界を
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
深い眠りの底に
昨日が積もって
あなたを象る
誰かを思う
胸の温かさが
あなたのぬくもり
この手に触れて
自分を見つけたよ
約束の果てに
消えていく灯火を
あなたの命と呼ぶなら
いつまでも守っている
桜の葉が落ち
見える陽のなかに
あなたの声を聞いて
頬をなぞる雨
あなたは歩く
思い出の街路を
その先にまだ僕は
たどり着けない