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さみだれの部屋  〜 新着順表示 〜


[882] トンネル
詩人:さみだれ [投票][編集]

手が自分のものじゃなくて
不気味だ
見ているものが誰かの差し金のような気がして
どうでもよくなる
生きていなくても生きる方法がある
そう思うのが死ぬこと?
神様を殺そう
そう言ってた人
誰だったろうか
何度も死んだんだその人
誰だったろうか
頭の中氷が入ってるみたい
とても気持ちのいい
そんな地獄
わかってるよね
空が青くなくなる
クオリアを持っていかないで
私はにんぎょのもりを歩いておりました
神様を殺そう
草木が嬉しそうに話しかける
庭のプランター
どこにいきたいかわからなくて
ふたりは海を漂う
宇宙人はニンジンを食べられず
怒鳴られて怒鳴られて
誰に?
生かされている
神様を殺そう
夕暮れに現れる
あの黒いの
誰だったろう
毎日浮いて
落ちていた人
誰だったろう

2015/11/29 (Sun)

[881] 朔望
詩人:さみだれ [投票][編集]

神様はいた
不安定な乳母車の中に
ペットボトルで作られたガラガラを持って
神様は満足そうに笑っておられる
君はホームセンターで
よく切れるものを探して
貧乏ゆすりをしていた
30分後
この世界から神様はいなくなった
そしてそんな世界を
僕はなんとなく楽しみにしていたのかもしれない

ねえ
何を望んでいたの
望んでもいなかった世界で
ねえ
何が叶えられたの
敵いっこない世界で

神様はいない
土手の川岸で
ペットボトルが浮いたり沈んだりしているのを
君は
一時間ほど眺めていた
レジ袋を片手にじっと
僕は知らないふりをしていたんだ
こんな世界を見て見ぬふりをして

望んでいるよ
君の幸せを

2015/11/26 (Thu)

[880] 
詩人:さみだれ [投票][編集]


誰かがコーヒーを落とした
それがすべての始まり
新聞に書かれた世論は
魂をもって動き出す
紳士のハットが宙に舞えば
太陽は思い出したかのように燃え始める

バーで気の沈んだ恋人は
恋人によって連れ出された
二人のために月は輝き
熱くなりすぎた気持ちを冷ましてくれる
猫がバランスを崩し転んだなら
愛は人々の心に知れ渡るだろう

それが愛だと少女は言った
わずか十歳未満の少女により
草花は歌を思いだし
鳥たちにすべての歌を与えたのだ

郵便配達人が望んだ幸せは
とても小さな一つのことで
誰もが笑い転げる中
星はそれを素敵だと言う
時計塔で待つ彼女に贈った
精一杯の光はそう誰のものでもなく

世界の始まりは些細なこと
あなたが望もうと望まなくとも
世界の始まりは始まるのだ
あなたが選ぼうと選ばなくとも

2015/10/23 (Fri)

[879] 
詩人:さみだれ [投票][編集]

世界の終わりがきた
何も知らされていない男は
記念すべき雑貨屋のオープンを迎えた
しがない老婦人が外から中をうかがっただけ
飾った風船もしぼんでいった
そう 世界は終わったのだ

ニュースを見ていた彼女は慌ててバーに駆け付けた
恋人は笑うばかりで指輪をストローで弄んでいた
彼女は決めた
もっと華やかな町に行こう
そして焦がして煤となった心を
もう一度固めよう、と
そう 世界は終わったのだ

湖で泳ぐ父子は初々しい
母はオレンジを剥きながら二人を見守る
狼でさえ見ているしかできない幸せ
もうすぐ夕立が降り雨の匂いに胸を踊らせる
そう 世界は終わったのだ

時計塔から針は姿を消し
代わりに人々は恐怖するのだろう
たったひとりそれを喜んだ
郵便配達人は最後の手紙を女の子に届けた
しわくちゃの手紙を読んだ彼女は
海へ走り、祈りを捧げた
そう 世界は終わったのだ

パーティーの準備を始めよう
あの子をうさぎ小屋から出しておやり
みんなで楽しく踊りましょうよ
おいしいケーキも作ったんだから
ニュースなんて見てないで
素敵な歌を聞かせてよ

そう 世界は終わったのだ

2015/10/23 (Fri)

[878] ねこにん
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猫は鳴いている
カセットの中
観測されている
再生ボタンを押したまま
いつまでも

猫は鳴いている
優しい檻
観測されている
誰も聞かなかった
言葉の意味を
今夜問う?

量子の海を漂う
排他的な僕らの思想は
毒にやられて
死んだの

猫は鳴いている
カセットの中
観測している
再生ボタンが戻らないうちは
いつまでも
小さな檻
いつまでも
量子の海
いつまでも

いつまででも

2015/10/16 (Fri)

[877] ハロー
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君を見ている青い星と
目尻に涙を溜めた彼と
小さな霧のような雲が
私の背中の向こうに

羊飼いは藁の上で
時計屋は塔のてっぺんで
おばあちゃんは毛布に包まれて
あなたは短い夢を見る

「夜が来るから」と
母は絵本をパタンと閉じて
私が夢を見るまで
月と一緒に見守っていた

あなたが闇に埋もれて
星ほどの涙を流すとき
私はそばであなたを見つめ
あなたが幸せな夢を
短くても私は守りたい

明日正夢になったなら

2015/10/12 (Mon)

[876] 秋空の星
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あなたが眠れる詩を
私はもう 書けない
あなたに励まされた詩を
私はもう 思い出せない

誰かの幸せな詩も
苦痛に満ちた詩も
真っ青な大気の向こうへ

落葉樹は揺れる
とてもさみしそうなそれを
私はこんなちっぽけなものに押し込め
胸を張り差し出す

あなたが眠れる詩を
誰かが、誰かが、と
待ち続けるだけの毎日を

ふと思い出した今夜

コンビニの光がちかちかして
星すら見えない今夜

私の詩を読んでください
あなたの心を書いてください
もうみんな眠る頃に
あなたが眠れる詩を

2015/09/24 (Thu)

[875] 咀嚼
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私の半分は死んでいて
腐敗していく過程の末
もう半分が意地悪く
ヘラヘラ笑っておるのです
さて、私とはなんぞや?
と、問うてみた次第でございますが
はて?と首を折るもの
苛立たしく咳き込むもの
隣の女のけつを撫でるもの
様々な顔がのっぺらぼうでござますゆえ
皆同じに見えてしまいまして
ヘラヘラ、ヘラヘラと笑っておるのです


廃人の一生
彼は枯れ枝を折り続けた
名前など知らない
どの季節のものかも
誰が用意したものかも知らない
彼は白いベッドが汚く変色していく過程を
死ぬまで見なかった
知らなかったのだと思う
彼のもとにはついに誰も来なかった
最後の心音の余韻を誰も聞かなかった
彼の手が力なく落ちたとき
やはり枯れ枝は折れた
たった一本の枯れ枝を
永遠に折り続ける未来を
やはり誰も知ることはないのだろう

あなたが異常であるからこそ
私は人々に愛されるのです

そんな神様の夢を昨日見たんだ

私は死んで
鬼に骨を抜かれ
私はもう一度死んで
舌を切り落とされる
私はまだまだ死んで
腸に羽毛を詰め込まれ
私はいつもいつも死んで
人間になって生きる
私はついに死んで
人間になって生きる
恋人は脳を抜かれて
空を見ていました
私の方はといえば
ヘラヘラと笑っておりました

2015/09/14 (Mon)

[874] トランス
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覚めやらぬ夢
雲の切れ間に見せる
薄紅の頬をした彼女
ほどなく波のごと失せる
覚めやらぬ夢
唐突に押し寄せる
虚弱の真理を見抜き
胸を撫で下ろす
「それとて微睡み、散在する某のひとつ」

往来を闊歩する
私は一人
ただの一人
覚めやらぬ夢
とうに見違えた
薄紅の頬をした彼女
白昼にゆらめく
ただ一人
覚めやらぬ夢
虚構の波間に見せる
どこか知らん航空写真
あなたは誰?
どこにいるの?
覚めやらぬ夢
見ているのは一人

2015/08/18 (Tue)

[873] 水銀の星にて
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風車広場を駆け抜けて
黒猫バロンは夜にとける
水色の水彩絵の具で塗ってくれ
路肩の画家にそう言い捨てて

不安定なきらきら星が
子供たちの内心の事象面から
外的接触を試みようと飛び出してくる
星ひとつをつまみ上げ
空いている窓に放り込んだ

黒猫バロンは帰ることを忘れたんだ
私は仕方がないとのみ込んだ
汽笛が鳴り
頭上を黒い渦が覆う
夜でもないのに

彼は夕暮れに何を思っていただろう
紫の空を仰いで
どうなりたかったのだろう

きらきら星が空気に浸され
私の肺をいっぱいにする
混濁する意識の片隅に
足元を過る黒猫バロンが
星のごと輝いて見えた

2015/06/29 (Mon)
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