詩人:さみだれ | [投票][編集] |
詩に対し真摯でありたい
朧なる月の周りを包む傘
私は目に見えるものすべて
詩に登場させたい
ただ愛を訴えるだけでなく
あなたの素晴らしさを私は讃えたい
技巧に戸惑いながらも
向かうべき場所は見誤らない
いかなるときも
私は詩に対し真摯でありたい
時計塔の針が待ち人を困らせる
私はありえない世界を空想し
詩に登場させたい
ただ情に流されるだけでなく
あなたの表現を私は讃えたい
詩に対し真摯であれ
魂のその奥深く
目を光らせたその歌を
詩と呼ばせてくれ
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
まほろばの夜にて
月は映えるがヴェールの奥に
うす濁る光を携え
そは野犬となりて街にのさばる
まほろばの夜とて
風は四肢を切りつけ去り行く
ガラス越しに手を伸ばせど
そは醜いパペット
そは戯謔の極み!
──
寝台に横たわり
夜想にふけるか
色青く
声さざめく
星に願うか
うちゆする
窓辺の花を
口にするのを
恐れた花を
仄かに香る
甘く淑やかに
けれど強やかに
夜想にふけるも
寝るには足りない
声さざめく
星に願うか
うちゆする
窓辺の花よ
清くあれ!
──
まほろばの夜にて
人は陰るが月光のごとし
違う御身の胸のうち
そは光を隠し夜にたゆたう
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この拙い詩を
ポケットに仕舞う人がいる
スーパーマーケットの駐車場
落ちたそれは踏みつけられる
シボレーとムーブ
赤子を乗せた乳母車
やがてそよ風が
ふわっと持ち上げ
北風が瞬く間にさらっていく
それは今日かもしれない
いや明日かもしれない
絶望感とは程遠い
微笑み人の眼差し
波長はひとつといわず
そのいくつかを伝う
それはいやらしい
もっとも忌み嫌うべきものにたどり着き
微笑み人を切り刻む
それこそが損なうべき
人間のもっとも損なうべき波長である
踏みにじる不良に
ポケットに仕舞っていた詩を叩きつける
最後の一文に魂の印鑑を押し
その場をあとにした
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(蜃気楼)
それは境界です
こっちは在りし日
向こう側には欲張りな番人がいて
「続き」に立ち入るものを追っ払っています
もちろん嘘は付いてはいけません
嘘は番人に没収され
私物化されてしまいます
そして希望を連れてきたものには
容赦なく槍を突き立てます
向こう側へ行くには
何も持たないことです
こちらでは追憶が日常茶飯事ですが
あちらではそんなものはありません
環境が一変するので最初はさぞ驚かれるでしょう
しかし住めば都と言います
ご安心ください
こちらでの"嫌なこと"などは
あちらにはございません
決してございません
あなたは犬ですね
首輪はこちらでお預かりします
舌を垂らしては行けません
言葉を没収されてしまいますので
それではお気をつけて
(続き)
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誰かに認めてもらいたいと
多くの詩を書いたとしても
それは雨のように
一粒一粒を気にするものはいない
好きだの愛してるだの
あなたは何万回書いただろうか
そうじゃない
もっと楽しませてよ!
共感を求めるあまり
自分らしさを無くす
わざとらしく悲観しては
にたにたと褒美を待つ
いやらしい手
昨日まで流行っていたね
今日からは廃っていくよ
面白いほど目まぐるしく
あなたの詩は過去へと追いやられる
忘れたんだ
それほどまでに凡庸な詩を
私たちは書いているという事実
人は貶されるのを嫌う
奮い立つこともせず
哀れなものだ
向上心なんてものはまやかしだったのだ
そう、これは世界の終わり
私はとけ込まなくてはならない
"騙されてはならない
あれは月からの有害な電波であり
それには何の意味も含まれてはいない"
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俺はもう詩人としては死んでいるのかもしれない
何を書いても何も書いてないような空虚や
何のために書いているのかという迷いすら
だんだんと失われていくのがわかる
幸せという目に見えない魔物や
絶望という溶けきらない食物が
ただ窓の隙間を探しているだけで
そう探しているだけで
誰かを讃えようものなら
言葉は逃げるように去っていくし
何かを諭そうものなら
不完全な言葉が瓶詰めから出てくるし
そうだ
もう言葉は俺を選んじゃくれないんだ
だから俺はもう詩人としては死んでいるのかもしれない
今は墓から出て
土だらけの体を払い
鏡を見て驚いているにすぎない
これからもっと残酷な現実が待っていて
俺は何も持たないまま"生きて"いくんだろう
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誰もいない闇の中で
コトコト
スープが煮たってる
2つの器に注げば
見えない誰かとの晩餐
昨日も夢の中で
人に優しくしていた
見えない誰かとの逢瀬
本当のことは隠しましょう
席を立った影の人
引き止める理由が見当たらなくて
何食わぬ顔でスープを一口
吐き気がして残した
今日は5人殺したよ
想像の中で完全犯罪
そしてロープを首に
5回死を選んだよ
誰もいない闇の中で
目をこらして耳をすます
ひとり分の鼓動があって
ひとり分のスープがあって
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月が微笑むと
太陽はにっこりと
そうして月が寄り添うと
太陽は愛しく擦り寄る
もし月が泣こうものなら
太陽は泣くだろうか
ならば今日から泣くのをやめよう
それから太陽は涙を流さなくなった
夕べ
星々はいつもどおり
それぞれの星座で団欒していた
人は子供を寝かしつけ
ある者は酒を飲んだ
海は心穏やかに
波は次の浜を楽しみに
鳥たちは眠りにつき
幼虫は繭の中に
街灯は気休めに
迷い猫を照らした
ひどくありふれた日だった
月が手を振ると
太陽は大きくもろ手をあげて
今度は太陽が手を振ると
月は寂しげに手を振って
それを見て太陽は寂しいと感じた
もし太陽が怒ろうものなら
月は怒るだろうか
ならば今日から怒るのをやめよう
それから月は声を荒げなくなった
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進化は終わった
人類が終わらせたんだ
火星からの使者は肩を落とし落胆した
神でさえ手に負えなかった
人類は酔っていた
だから火星人の話にはひどく怒った
すべて称賛されるべき世界に異議を唱える異端者
それらはみな牢に入れられ
次の日には処刑された
神は見捨てることにした
火星からの使者もまた
人類は幸福の渦中にあったのだ
それがまがい物だと疑いもせず
人類は高々に掲げたよ
滑稽なまでの系譜を
そこに進化はない
人類が終わらせたんだ
可能性という種を
人類は握りつぶしたんだ
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行き先はどっちだ
雲の切れ間だ
漂いながら渇いていく
雨をおくれよ
友達がほしいよ
ひとりぼっち太陽の気持ち
君がいないと
泳げやしないよ
砂漠の船にぶつかって
骨まで砕けたよ
砂に埋もれたよ
見つけてほしいよ
戻れなくなる前に
雲がずっと下に
星がずっとそばになる前に