詩人:さみだれ | [投票][編集] |
生きることを求めたのは
きっと神様ではない
お母さんでも
近所のおばさんでもない
生きることを求めたのは
最初から最後まで私だったのだと
私の産声をもうみんな忘れたかもしれない
死にたい気持ちを連ねた詩は完全に削除されたのかもしれない
愛する人に与えられた喜びを置いてきちゃったかもしれない
そしてまだ私は失っていくばかりだろうけど
今日誰かが気づかせてくれるかもしれない
生きることを求めたのは
最初から最後まで私だったのだと
みっともないけど
あなたがいなければ
こんなことにも気付けない
そんな偶然が
さりげなく私を支えている今日を
生きたい
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彼は飛行機の背中に
宇宙人にもわかるような絵を描いた
彼女はキスの最中
目を閉じない
見逃したくない事象が絶え間なく続くから
君はスプーンを片手に
魔法の呪文を唱える
彼は深い森の中
湖を作ろうと穴を掘った
世界が丸くなくちゃわからない
こんなこと世界が丸くなくちゃわからない
私の脳が真っ直ぐ月を貫いていたなら
きっとわからない
はずでしょ?
でも残念ながらあなたの心は真っ直ぐはくちょう座の方へ向いているから
太陽ほど従順ではあっても
思いやることなんてできやしなかっただろうね
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日向を歩く
背中を追って
愛の尊さを知ろう
あなたの腕に掴まるまで
曇りなき青空であろう
胸の奥所(おくが)に
住まう喜びを
遠く逃がしてやろう
その日がどれほど酷くても
手を振りほどいて見送ろう
夕べの祈りは
たゆたう星に
暁をもたらし
宵の願いは
窓を開け
月を仰いでいる
この詩歌が
あなたに届けば
誰かに届けば
日向に連なる
景色の際に
その手を触れさせて
そして今よりも知ろう
あなたの喜びを
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今、ベランダで
布を結って
真っ暗な影に
落ちていくよ
世界が皮肉ったように
明るくなるのも待てず
今、少し笑ってくれ
頬を引っ張って
揺れた視界の端に
星がひとつ ふたつと
今、空の近くで
何を見つめて
色とりどりの影に
落ちていくの
世界が貶めるように
風が吹くのも待てず
今、夢は終わって
頬が冷たくて
カーテンの隙間を縫って
音もなく光さす
その瞬間にも世界は
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未来はきっと
あなたが思うようなものじゃない
木の枝を振り回して
勇者を気取っていた
あの君が思うようなものじゃない
「だけど僕には世界が変わっていくように見えるんだ」
海の中で見ていた光は
限りを教えているようで
手を伸ばしてみても
ゆらゆらと遠ざかるだけ
僕の背中に広がる未来は
どこまでも暗がりが続いている
だけど僕には聞こえているよ
君の声が
希望に満ちて はしゃいでいる足音が
未来はきっと
誰が思うようなものじゃない
あなたがいる
きつく握った
その手が世界を変えて
「それがいいよ」と
君の声が
希望に満ちて
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どこまでも拙い希望の歌を
成層圏の天辺で歌ってみる
アメリカのジャンボが物差しで引いたような
飛行機雲ひきながら通りすぎて
ロケットが唸りながら飛んでいく
僕はいつも知らない
あの中の人たちや
無事を願う人たちを
僕はいつも知らない
そのなかに紛れた
変幻自在の心を
はじめからあったように思っていたんだ
そんな風にできてると思っていたんだ
ジャングルで暮らす裸の人たちや
砂漠で耐えしのぶ痩せた人たちを
僕はいつも知らない
あの希望の歌を
世界の真ん中で
歌っている人を
僕はいつも知らない
そのなかに紛れた
変幻自在の心を
僕は知らない
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今夜、君を思う
窓の外
黒い雲の切れ間
『うつりゆくよに』君を思う
月明かりを含んだ双眸
とても静かに私を見つめる
君と同じように君を思う
誰も止まらない赤信号
私だけが通りすぎて
そんな世界の寂しさに触れ
ふと君を思う
存在というものは
限りなく希望に近い
だから私は君を思う
今夜、夢を見る
暖かな日差しのなか
香る花に優しさを見て
思う君が前を歩いて
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銀の梯子で
月へと上っていく
さみしがりの彼女が
背を向けて上っていく
海は凪いで鳥も鳴かず
地平には人影もなく
真っ白な月の後ろに
彼女が隠れるまで
私には何ができる
どんな言葉が届く
ここにあるのはわずか
月までは持っていけない
さみしがりの彼女は
きっと知っていたんだ
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消費期限の切れた
幕の内弁当膝において
神様に慈悲深く祈り
鳥たちに分けながらたいらげた
それはもう千年前の
未熟な僕たちの御先祖で
今もまだ根付いてる
ご飯の上の赤い丸が
ただそれだけ残せたら十分だ
センソウもヘイワもいらないぜ
偉人も大層な歴史も
進んだ文明もいらないぜ
僕にはお母さんがいる
お父さんも妹もいるんだ
星の数ほどの幸せは
ひとつとしてほしくはない
バカでかい太陽ほどの
嬉しさがあればいい
塩素混じりの水を飲んで
ため息をつきながら歩き出す
前にはなにもないくせに
ないからどこにでも行けたんだ
それはもう千年前の
春先の午後で
今もまだ根付いてる
二本足の僕らがいる
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いつか誰も彼も
嫌わずにいられるときが
あったとしたら
ずっと素敵だと覚えているだろう
僕はいつもいつの日も
嫌うことを嫌うだろう
いつか誰も彼も
死なないでいられるときが
くるとしたら
きっと幸せを忘れているだろう
僕は今日も昨日のことも
空の色ですら愛おしい
三日月がころころ笑う
僕の心を見透かしたの
そんなところにいないで
ゆっくり夜明けまで話そうよ