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さみだれの部屋  〜 新着順表示 〜


[853] ワルツ
詩人:さみだれ [投票][編集]

あと数百回生まれ変わって
あの垂れ桜を見に行こう

あと数百回生まれ変わって
あの夜のことを打ち明けよう

あと数百回生まれ変わっては
止めどなく涙も流れてこよう

あと数百回生まれ変わっても
損なわぬ思いを携えよう

悲しいけど 一回きりの
最終回の前に君の心に
穏やかな春の日差しが見えて
眩しそうに目を細めて笑う

あと数万回生まれ変わって
あの海へバスを乗り継いで行こう

あと数万回生まれ変わっても
君の心に留めておいてほしい

2015/01/18 (Sun)

[852] 常夜灯
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私の人生を狂おしく愛する
病的な過去の亡霊たちと
タップを合わせ軽く踊れば
この脳は完成された人間のそれとなる
夜の湿り気のあるにおい
悠長に煌めく星ぼし
タンポポの綿毛が丘をすべる
永劫の檻の中
そんな風に世界は在ると思うの

春に魅了された太陽がわななく
キチガイたちの背中
「それがあなたを愛せない理由」

幾千万の人生を平然と愛する
理解に自惚れた観客たちと
手をとり微笑み合う日があれば
この脳は普及した人間のそれとなる
「人殺し!人殺し!人殺し!人殺し!!」
壁から染み出てくるもの
複雑に交差した線の間
主張する余白
これは誰のための言葉なのか

喉や心を潰しても
あなたを愛する言葉はでない

2015/01/09 (Fri)

[851] W
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君にあげる

花の種
子犬の足跡

君にあげる

誰かの願い
希望その他諸々

君にあげるよ

星の一粒
それを覆う闇

君にあげられる

思われた名
示す航路を

君は受け継いだ

この山の葉の一枚(ひとひら)
海の一滴を

いつかあげよう

2015/01/05 (Mon)

[850] 月光蝶
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三日月が胸に抱く
ふるさとの面影は 淡く
水彩画のタッチによく似ていた
私は真っ黒いジャケットを着て
君の歩く道をなぞる
金木犀の公園へ行き
ベンチに腰掛け
遠い星に望んでみる

帰りたい

君がこんなにも痩せて
背中を丸めて眠る姿が
私には遠く
現実味がない
私の浮遊した心を 君は掬いとり
この星へ帰しているのだろう
自分のことなんて気にもしないふりをして

2015/01/01 (Thu)

[849] 希望は座して
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君は希望
心が大気に掴まった
その象徴が君で
君があるために
私は生きている
なんてか細い繋がり
ふと力を抜けば死んでしまいそう
そんなもの
あの日の
美しい黄金の秋も
そんな風に生きたのだろうか
君は希望
目の前で僕の手をとり
不確かな未来を淡々と読み上げる
しかし僕は天性の天の邪鬼で
君の語る姿の
後ろにある光景を
不鮮明に捉えられた
視覚を鼻で笑い
そして君に怒られる
それほどの幸せを
死と呼ばなければならないなら
あの日の
一等星の輝きまでも
むなしく思えてくるのだから
君は希望
そう呼ぶにふさわしい
君は希望
私があるために
君は生きている

2014/12/24 (Wed)

[848] セントポーリア
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私の言葉が届くところで
あなたがうつらうつら呆けている
それが嬉しいと思いたいな

私の手が届くところで
あなたがテレビを眺めている
それが当然だと思いたいな

あなたの声が霞ゆくまで
私は詩を書くのでしょう

あなたの涙が降りしきる間
私は言葉を探すのでしょう

空が青いのと同じように
あなたの背が見えたなら
私は世界など二の次に
あなたの詩を書くのでしょう

安っぽいメモ帳に
思いの丈をぶつけた夜に
私は神様を許せなくなったんだ

星が流れるのと同じように
あなたの影が過るから
私は神様など二の次に
あなたをただ信じている

2014/12/20 (Sat)

[847] V
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慎ましやかに戸を叩く
恋の色香に庭は嬉しく
つゆとなった夜風を落とす

町はだんだん熱を帯びて
僕と君の頬を染め
歩けば風見鶏が振り返り
止まれば猫が覗き見る
塀の上から神様のごと

それは今日
二人のためばかりでなく
世界が毅然と回っているから

濃紺の道を鳴らす
豊かな音に誰か嬉しく
それが僕であるならば
君もそうであってほしい

「夏鳥」

2014/12/13 (Sat)

[846] パープルの手帳
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覚えたことより
忘れたことの方が多くなり
私は
人間らしさを
なくしてしまいそうで
ふとした瞬間
肉塊となる
ここにあった心は
どうしたのだろう
せっかく
幸せとわかり合えたというのに
君の名を
もう二度と呼べない悲しみを
どこに放ったのだろう
私は何だったのだろう

風がそこにあるわけを
風は誇らしげに語る
そして悪戯に
私の意味について問う
ベージュの
しかし赤く巡る血肉の
動力炉をつつきながら
甘ったるい匂いをもって

私は
この星の記憶を
どれだけ奪っただろう
私は
この星に対し
どれだけの責任を押し付けただろう
その代償がこの様なのだから

(以下余白)

2014/12/10 (Wed)

[845] やんわりとした終末
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星のお母さんが来て
「帰ろう?」と手を差し出す
僕らの町の一番高い
銭湯の煙突が潰れた
人差し指は学校の方へ
お兄さん指は隣町へ
お姉さんは川を塞いで
弟はスーパーの看板に
僕の家は気づけばとうに
お隣さんと同じ家
僕らはどこにも帰れないまま
星は太陽に手を振って
「バイバイ」

2014/12/07 (Sun)

[844] U
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時折振り返ってる
あの子の背中に張りついた
優しい悪魔があの子自身には見えない

時折しゃがみこんでる
踝に爪を立てた
優しい悪魔があの子自身には見えない

今夜 空が光って
あの子はどこへも行けない
優しい悪魔が僕らには見えない

薬が切れて愚図りだす
おかしなことを考えてる
いつだってそうだ
怯えていた

でたらめに走ってる
あの子の首を絞めてる
優しい悪魔があの子自身には見えない

振りかざした手が光って
その手を強く握る
優しい悪魔が僕らには見えない

混ざり合う境界で
冗談を囁く
優しい悪魔があの子には見えない
僕らにはずっと見えない

薬が切れて愚図りだす
不思議なことを考えてる
いつだってそうだ
怯えていたよ

2014/12/05 (Fri)
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