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さみだれの部屋


[547] 穏やかなもの
詩人:さみだれ [投票][得票][編集]

万華鏡の中で息絶えた
移り気な私の心などは
歴史とは呼ばない

独白に満足しては
誰かに聞かせてやろうとしては
物静かだったことに気付き

夢〃にさすらうも
気持ちが晴れることはない

写真立てなど持たずとも
鏡などなくとも
私は自分の姿を忘れはしない

それいかに醜悪であろうと
死ぬ術がないのだ
生き続けるしかあるまい

ひぐらしの泣きじゃくるのを聞いて
早く夏が終わればと思う

私の鬱憤とした気持ちも
どこかしら楽しげになること
あってほしいが

つまらないものはつまらないと
言えないお前たちがいけない
卑猥なお前たちのことだ
きっと何も言うまい
それ狸の皮算用

地球儀などいくら回したところで
話すことはおろか
キスすることもできまい

くたびれたベッドにすがりつくのは
私の不純ゆえか

この心臓の奥深く
しかと杭を打ち込んでくれ
手足を縛り磔
言葉も残せぬほど
思い切り

そうしていつかまた
キリストがごとく息を吹き返したなら
私の口を縫え
鼻を詰め物をし
再び杭を打て
私が生き返る度毎に

2012/07/26 (Thu)

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