詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
昨日まで蕾だった
紫露草が
今日は咲いており
昨日まで咲いていた
クレマチスが
今日は散っていた。
「ありがとう、またね」。
花々の生と死の間に
幸せな約束が
こだまする。
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1日の始まりの感謝は
人生を輝かす
太陽のごとく…。
1日の終わりの感謝は
人生を輝かす
月光のごとく…。
それぞれの心の中に
それぞれを輝かす
太陽と月と…。
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緑の葉陰に
紅いルビーのように輝く苺。
旬は冬でもなく
春先でもなくちょうど今。
緑の葉陰に
紅いルビーのように輝く苺。
降り注ぐ
紫外線の多い光を浴びて
それから体を守る
ビタミンCをたっぷり備え…。
緑の葉陰に
紅いルビーのように輝く苺。
洗って口に入れれば
体の中から光を放つ。
紅いルビーのごとく美しく…。
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何もお世話していないのに
そばを通れば
笑いかけてくれる野の花。
時には踏んだりしているのに
何でもないように
笑いかけてくれる野の花。
たくましくて優しい花
野の花。
きっと子どものころに
遊んだことを
覚えていてくれているのかもしれない。
バラも向日葵も
ましてクレマチスやクリスマスローズなど
知らなかったころ
花といえば
野の花だったから…。
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「愛しているよ」と花は咲き
大地に、空に、風に、雨に
佇むものの心に
ありったけの笑顔で
物語を紡ぎ始める。
時に饒舌に
時に控えめに…。
その紡がれた物語を
私たちは季節と呼ぶ。
そして
「ありがとう」と花は散り
大地に、空に、風に、雨に
佇むものの心に
ありったけの気持ちで
物語を刻む。
時に賑やかに
時にひっそりと…。
その刻まれた物語を
私たちは四季と呼ぶ。
野イバラはいよいよ白く
傍らには咲き始めた紫露草。
心の大地には
夕暮れの園の満開の桜。
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二礼をして集中する。
柏手を二つ打つ。
「神様、私はここに居ます」と。
その音は山にこだまし、
神様の元に届けられる。
手を合わせたまま
お祈りをする。
「いつもありがとうございます」と。
大きなものと一つになる。
安らかな気持ちになって
一礼する。
たたらの里
奥日野の小さな社にて。
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山道を登って下り
いよいよ山に分け入る。
前日の雨が染み込んだ
ふわふわの森を歩く。
パイプを連ねた細い橋を渡り
少し行くと
木々がまばらになった場所があった。
江戸から明治にかけて
全盛を誇った奥日野のたたらの一つ
都合山(つごうやま)たたら跡。
炉の跡、砂鉄の洗い場跡、
鍛冶場跡、金屋子神社跡…。
建物があった場所は
窪地としてのみ姿をとどめ
今はそれも
コケやシダのすみかとなっている。
説明や立札がなければ
きっと気遣いに違いない。
けれど
ひっそりとした森で
往時の活気とにぎわいを感じたのは
私だけでないに違にない。
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雨の朝に咲いた
バラをあなたに。
今年
最初に咲いた
桃色のバラを。
激しい
今朝の雨のように
深い悲しみの最中にいる
あなたに。
あなたに似た
美しいバラを。