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中村真生子の部屋  〜 投稿順表示 〜


[211] 朝の力
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私がいることを

今日も変わらぬ笑顔で

受け止めてくれる

窓辺の風景よ。

静かに心を寄せれば

「もう1日がんばってみよ」と

朝は開けてゆく。


2012/09/01 (Sat)

[212] 秋のページ
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昨日まで

熱い風が吹いていた

川土手を

すーっと

涼しい風が駆け抜けていく。

「わたしらだって

いつまでも夏じゃないさ」と

つぶやきながら…。

「わかっているよ」と

ススキの葉が首を揺らす。

虫の声に混じって

だれかがこっそり

秋のページを開く音がする。


2012/09/02 (Sun)

[213] パンの味
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そのパンは

小麦とバターの風味がして

耳までサクサク。

噛むほどに

素材の味わいが広がり

今更ながらに

パンのおいしさを知る。

そのパンは

作った人の人柄が偲ばれて

心までホクホク。

めったに笑顔を見せない

けれどとびっきりの

笑顔をもっているその人の…。

小麦粉とバターのように

二人が結ばれた理由が

解けていく…。

その香ばしい風味とともに…。


2012/09/03 (Mon)

[214] (秋の)兆し
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「寒いね」と

窓を閉めて寝た翌朝

草むらには

ぎっしりの露の玉。

あれから

ひっそりと暮らしていた桜が

葉を風に揺らしている。

秋をはらんだ風に。

なんでもない

今を愛しむように…。

なんでもない

自分を愛しむように…。

世界に愛されていることに

気づいたもののごとく…。


2012/09/04 (Tue)

[215] 黒と白
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苦しみに

耳を傾けて

黒の中の色を知り

悲しみに

心を寄せて

白の中の色を知る。

黒と白…

色の中の色。



2012/09/05 (Wed)

[216] 贈り物
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気持ちのいい朝に

ふと

湧き上がるように

やってくる

生きているという喜び。

脳というより

体の細胞の感覚。

それはきっと

自然な食べ物が

60兆個の細胞に届けてくれる

大地からの贈り物。



2012/09/06 (Thu)

[217] 窓辺にて
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稲光と

雷鳴と

山で降っているだろう

雨を通り抜けてきた

ひんやりとした風と…。

窓辺で

手を広げて

深呼吸をする。

名残の夏と

小さな秋が

胸の中にとけていく…。



2012/09/07 (Fri)

[218] 椅子
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食卓で使っている椅子の

きしみや座板の浮きが気になっていた。

その椅子が今朝

「もう限界だよ〜」とつぶやいた気がした。

慌てて知り合いの

家具作家さんにきてもらう。

この椅子と

暮らし始めたのは30年ほど前。

中古品だったので

それより年はいっている。

以来、毎日のように使っていた椅子。

塗装も半ばはげ落ちている。

けれど

「塗装だけ新しくしないほうが

いいですよ」と作家さん。

そうだね

一緒に年を取ってきた証なのだから…。

悲しい心も苦しい心も

厭わず支えてくれた証なのだから…。

椅子は山の工房へと運ばれた。


2012/09/08 (Sat)

[219] 森の小さな詩
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幼木は風が嫌いだった。

風は幼木を揺らし不安な気持ちにさせた。

雨と太陽は友達だった。

けれど雨が長居をすると疎ましく思い

時折、太陽のおせっかいに嫌気がさした。

幼木は少しずつ大きくなった。

春のある日、幼木は

葉を揺らす風にふと安らぎを覚えた。

長居をする雨ともおしゃべりを楽しみ

おせっかいな太陽をもやさしく迎え入れていた。

幼木はすっかり大きくなっていた。

そして友と

春にはいずる幸せを分かち

夏には長ずる楽しさを分かち

秋には実る喜びを分かち

冬には慎む尊さを分かちあった。

やがて幼木は老木となり

ある日、根元から折れてばったり倒れた。

雨は涙で清め

太陽は温もりで包み

風は弔いの歌を歌った。

友に見守られて老木は大地に還った。

生まれたばかりの幼木が

その根元で風に揺れていた。


2012/09/09 (Sun)

[220] 花に想う
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裏の畑から切ってきて

母が玄関に飾っていた花。

グラジオラス、アストロメリア、

百日草、シオン、パンパス…。

花を指差しながら

母と名前を言い合う。

グラジオラス、アストロメリア、

百日草、シオン、パンパス…。

名前を言い合いながら

この世の奇跡を悦び合う。

花の咲く奇跡と

今ここに

こうしている奇跡と…。


2012/09/10 (Mon)
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